最近何かと話題のドローン。日本でもすっかりお馴染みとなりました。
海外でも測量調査や運輸など幅広い分野でドローンの活躍が期待され、さらなる研究開発と実用化が待たれるところ。
で、なぜドローンは最近こんなにも話題になっているのでしょう?
それはズバリ、「使い方によってはとても便利な機械だから」。
ドローンには無限の可能性があります。国内外を問わず、さまざまな分野で導入や実用化の研究開発がなされているところです。
一方で、まだクリアされていない問題点も残っています。例えば、安全性やプライバシーの問題、法規制についてなどです。新しく出てきた技術なので、あらゆる点でまだハッキリしたことが決まっていないのです。ドローンは日本より海外が先進していると言われていますが、海外の例をそのまま取り入れるわけにも行かず、正直、よく分からないことだらけなのではないでしょうか?
この記事では、「日本」と「海外」という視点で、ググッとドローンに迫ってみたいと思います。
・ドローンって、名前はよく聞くけど結局どんなものかよくわからないなぁ。。。
・ドローンはどんなことに使われているんだろう。日本と海外での違いって何かあるのかな?
・自分がドローンを飛ばすのに、何か決まりがあるなら知りたい
といった疑問をお持ちの方、ぜひご一読ください!
1. ドローンって、何?
そもそもドローンとは、一体なんだろう?
多くの人は「ドローン=プロペラ式の無人航空機」というイメージを持っているかも知れません。ですがそれは、全くの間違いではないものの、大正解とも言えません。
ドローンとは、「自律制御された無人機」のことです。
よく似たものに、ラジコンのヘリコプターが挙げられます。似ていますが、人間が無線で操作するラジコンヘリは自律制御ではないため、ドローンとは呼びません。さらに言えば、プロペラ式であるとか、航空機であるという決まりもないんです。「自律制御された無人機」であれば、地上を歩くロボットもドローンということになります。例えば、お掃除ロボットのルンバは、人間が無線で操作することなく、その場の位置情報や状況などを自分で判断し、お掃除という目的を果たしますよね。このような「自律制御された無人機」が本来ドローンと呼ばれるものなのです。
しかし、最近よく聞く「ドローン」という言葉は、コンパクトなプロペラ式の無人航空機を指していることが多い気がします。カメラを搭載していることをドローンの条件としている場合もあるようです。
ちょっと混乱してしまいそうですが、本来は「自律制御された無人機」という意味なのだということを、頭の片隅にでも置いていただければと・・・。最近では自動操縦ドローンが普及して来て、やっとドローンがドローン本来の姿に戻ったといったところでしょう。
2. ドローン業界の最新動向
さて、ドローンがどんなものなのかざっくり分かったところで、次はやはり用途ですよね。ドローンは、どのような場面で使われているのでしょうか。一般的には
・農薬散布や環境調査
・臨場感のあるスポーツ動画の撮影
・危険を伴う場所、立ち入れない場所での撮影、空撮など
・荷物の集配
・事故や災害現場での状況把握、救助等
などの場面で役立っていますが、これに止まらず、日々開発研究が進んでいます。
この章では、日本国内および海外のドローン業界の最新動向をご紹介しましょう。
2-1 日本のドローン動向
(1)楽天「そら楽」、ドローンで初の商用利用
楽天は2016年4月、ドローンによる荷物配送サービス「そら楽」の開始を発表しました。第1弾として5月9日から1か月間、ゴルフ場で試験導入し、将来的には一般のECや過疎地・山岳地への配送、災害時の活用も視野に入れているというものです。
機体は、千葉大学発ベンチャーの自律制御システム研究所(ACSL)と共同開発したものを使用。スマートフォンからゴルフ用品や軽食、飲み物を注文すると、ドローンがコース内まで商品を届けてくれるのです。楽天側はタブレットから発送を指示するだけ。目的地までの飛行、荷物のリリース、離陸ポイントまでの帰還を完全自動で自律飛行することが可能です。スマートフォンの位置情報を利用し、注文者がゴルフコース内の受取所に近づいたタイミングで商品を届けることができます。
楽天は千葉市などと協力し、同市の国家戦略特区を活用した、ドローンによる都市部での宅配実験にも参画していますので、今後の展開が注目です。
(2)高度な作業も可能になります!アーム付き空中ロボット型ドローン
愛知県名古屋市にある産業用ドローン専門メーカー「プロドローン」。高安全、高機能、高安定の各種産業用ドローンを製造販売する同社が、2本のアームが付いたドローンを公開しました。海外メディアにも紹介され、注目を集めています。
2本のアームを使って、荷物を運んだり、手すりに着陸することが可能で、最大耐荷重は10kg。 現在のドローンは、空撮や配送などの分野で主に注目を集めていますが、今後注目を集める分野は、アームなどを搭載した空中ロボット型ドローン!まさにプロドローン社が世に送り出す日本発のドローンなのです。アームを搭載すれば、より複雑・高度な作業ができるようになり、人間の立ち入りが難しい場所で、さらにドローンが活躍することは間違いありません。
しかし、この手のドローンは世界的にあまり類を見ません。かつての日本のお家芸、モノづくりの技術は今なお衰えてはいないようです。今後の開発・実用化の動向は、大注目ですね。
(3)新しいスタイルのモータースポーツ、ドローンレース
2016年6月、「JAPAN DRONE NATIONALS」が仙台で開催されました。同年10月にハワイで国際ドローンレース協会主催の世界大会(賞金総額20万ドル)があり、本レースはその日本代表選考会を兼ねた全国大会だったのです。First Person View(一人称視点)の大会としては国内最大規模で、観客を入れた興行としては国内初。とうとう日本でも本格的なドローンレースが始まったと言えます。
また、スポーツイベントとしてのドローンも注目されています。2016年3月にドバイで開催された「World Drone Prix In Dubai」は、初のグローバル規模のレースイベント。賞金総額は日本円にしてなんと約1億2000万円!海外はやはりケタが違います。タイムアタックはもちろん、人間技では難しいと思われるコースを飛行したり、特別な演出を施した見事なエキシビジョンが実施されるなど、イベント性も抜群です。
主催の国際ドローンレーシング組織「World Organisation of Racing Drones」は、ドバイ大会を皮切りに世界中でドローンレースを開催する意向を表明。つまり、近い将来、日本や中国、韓国などアジア域内でも World Drone Prix が開催される可能性があるということです。特に日本は2020年に東京オリピックを控えており、それに向けて大規模なドローンレースが開催されるかもしれません!要チェックです。
その他のドローンレース関連の動きとしては、2016年3月に日中韓のドローンレース協会が協力・提携することを表明。アジア地域のドローンレース活性化を目標とするアジアドローンレーシング協会(ADRO)が発足しました。
また、2016年10月には日本ドローンレース協会が関西、四国、東北に支部発足させ、全国組織となりました。日本各地でドローンレースの裾野を広げ、ドローン業界の人材の育成、業界の技術の発展・成長に貢献していくとともに、全国ドローンレース選手権等の開催も予定しているとのこと。
日本国内、アジア地域のドローンが、今後アツいことになりそうです。
2-2 海外のドローン動向
(1)ドローンは未来の交通手段となるのか
ドローンが運ぶのは、もはや荷物だけではありません。海外では、ドローンを未来の交通手段として利用しようという動きが活発化しています。ドローン自体の性能を高め、人を乗せて飛行させる「ドローンタクシー構想」です。
2016年3月、ドイツのE-volo(イーボロ)社は自社で開発したドローン「ボロコプター(Volocopter)VC2000」に人を乗せて飛行することに成功しました。操作は通常のドローン同様に、コックピット内に設置されたナビゲーション画面に目的地を入力したり、ジョイスティックを動かすだけで目的地に向かうことができるのです。ヘリコプターなどのように、長時間にわたる操縦訓練を受ける必要はありません。
また、中国のドローンメーカーEhang(イーハン)も、人を乗せて飛行できる有人ドローン「Ehang 184」を開発。アメリカ連邦航空局FAAの許可を得て、米国ネバダ州で有人飛行試験を行うことを発表しました。「Ehang 184」はホビー用のクアッドコプターをそのまま大型化したもの。操縦桿のようなものは取り付けられてはおらず、人を乗せるための搭乗スペースのみ設置しています。搭乗者はタブレットを使って目的地を指示するだけ。自動的に離陸して、目的地まで完全自動方式で飛行が可能となっています。
現段階では飛行時間や機体の大きさ等の問題で長距離飛行は難しいものの、そこは今後の研究開発次第ですね。米エアバス社などは、最終的には乗客と荷物を両方輸送でき、相乗りできる飛行タクシーをイメージしているそうです。飛行タクシーのデザインはほぼ終了しつつあり、今後はテスト飛行のための開発を進めているとのこと。
事故につながる障害回避など大きな課題が多いことは否めませんが、技術的には「空飛ぶタクシー」が実現する日も、そう遠くないかもしれません。
(2)郵便配達ドローン
スイスで、ドローンを使った郵便物の自動配送試験が開始されました。この配送試験は、スイスの国営郵便事業会社Swiss PostとSwiss WorldCargoが行っったものです。
使用されるのはMatternetの小型貨物の自動配送専用のドローンシステムで、専用ドローンと貨物受け取り用の専用バスケット。Matternetのドローンは、貨物(ここでは郵便物)を搭載してGPSを使って目的地へ到達。目的地に設置されている専用バスケットに貨物を投下して送り届けるわけです。
受け取り用のバスケットが必ず目的地にあること、投下後の郵便物の安全性など課題はあるものの、今後の展開が気になります。
(3)ドローンが人間を救う!国をあげてのデング熱対策
2014年夏、代々木公園が一時封鎖される事態を招いた「デング熱」。すでに日本では収束したかのようですが、世界ではいまだ流行が続いています。そのデング熱対策に、ドローンを使う国が現れました。熱帯の国、シンガポールです。
デング熱に有効な対策は「蚊の繁殖場所を徹底的に失くすこと」。特に人の目が届きにくい「屋根の雨どい」で、ドローンは蚊の繁殖撲滅に向け試験利用されているのです。調査には多くの人手が必要です。高所に足場を組むようなこともあり、危険も伴います。ドローンを利用すれば、安全かつ少ない人手で調査が可能となるわけです。
また、ドローンを使って蚊の幼虫の殺虫剤を雨どいに置き、成虫になるのを防ぐという国家環境庁の対策業務の一端も担っているのです。
シンガポール政府は2015年初め、運輸省(MoT)傘下にUAS(Unmanned Aerial System)委員会を設立しました。UAS委員会が、ドローンの活用を拡大するための企画・検討を行っているため、様々な政府業務にドローンが積極的に採用されています。例えば配達用ドローンのテスト、前述の蚊の退治、海洋調査、文化遺産の調査管理、災害対応、人命救助などなど、導入例は多岐に渡ります。それに伴って法整備も着々と進んでいる状況です。
(4)宅配ドローン、コンビニもピザも準備はOK
2016年7月、米セブンイレブンはネバダ州でドローンを使った初の宅配業務を実施し、成功したことを発表しました。ローターを6つ装備した業務用ドローンを使用し、チキンやサンドイッチ、コーヒーなどの食料品を、完全自動で宅配するというものです。目的地である個人宅上空に到達すると、小型ケースに収められた食品パッケージを上空10メートルほどの高さから投下!少々アメリカンなスタイルではありますが、宅配は無事に完了しました。
また、同年8月にはドミノピザが、ドローンによるピザ配達サービスのテストをニュージーランドで行い、成功しています。商業用ドローンでピザを配達したのは世界初とのこと。
ニュージーランド政府が施行するいくつかの規制さえ解決されれば、ピザの配達にドローン導入が実現可能となります。現在のニュージーランドでは、ドローンはオペレーターの視界から外れることはできません。この規制の緩和をニュージーランド当局と協議している状況です。
ドミノピザは、従来の配達方法はそのままで、自動車やスクーターを利用するよりはるかに速い場合にのみドローンを使用する方針。ニュージーランドでの成果がよければ、ドローン配達をオーストラリア、ベルギー、フランス、オランダ、日本、ドイツなどに拡大したいと考えています。
なお、米セブンイレブンとドミノピザ、どちらもフラーティー社のドローンを利用して、配達テストを成功させています。
3. ドローンを取り巻く日本と海外の違い
国内外のドローン業界の動向は、ざっとお分かりいただけたでしょうか。
日本と海外では、ドローンを取り巻く環境について、いろいろな部分が異なっているな、ということに気が付きます。日本と海外、仮に同じ機体を使ったとしても、実は大きな違いがあるのです。
ここでは、日本と海外でドローンを取り巻く利用環境、規制等の違いをチェックしてみましょう。
3-1 日本のドローン規制法
日本ではドローンを飛ばすための免許はありませんが、ドローンの飛行に関しては法律による規制があります。「ドローン規制法」と呼ばれていますが、実際にそのような名称の法律があるわけではありません。航空法の一部が改正され、その対象にドローンが含まれています。
法律では「無人航空機」に関する規制という形で、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、構造上、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」が対象です。つまり、ドローン、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。飛行に当たり守るべきルールは以下の通りです。
(1) 飛行場所にかかわらず
① 日中に飛行させること
② 目視範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
③ 人又は建物、自動車などの物件との間に距離を保って飛行させること
④ 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
⑤ 爆発物など危険物を輸送しないこと
⑥ 無人航空機から物を投下しないこと
上記に抵触する飛行を行いたい場合(夜間飛行や目視範囲外飛行など) は、事前に国土交通大臣の承認を得る必要があります。
(2) 以下の場所を飛行させるには別途国土交通大臣の許可が必要
① 空港周辺の空域
② 一定高度以上の空域
③ 人または家屋の密集している地域の上空
つまり、夜間や目視できないところ、空港や人口密集地などで飛ばすのは原則NGです。これらのルールに違反した場合には、50万円以下の罰金が科せられます。
ちなみに、機体とバッテリーの合計重量が200g未満の、いわばおもちゃレベルの機体は法の対象外で、好きに飛ばしてもOKということになります。
3-2 海外のドローン規制
アメリカでは、趣味以外の、つまり商用目的で運用されるドローンを対象とする新規則が発行されました。米FAA(運輸省連邦航空局)が発表した、ドローン規制法案の主なポイントは以下の通りです。
① 人間の目で確認できる範囲の飛行
② 関係地域以外の頭上に飛行させてはならない
③ 夜間の飛行禁止
④ 最高速度は時速100マイルまで(約160キロメートル)
⑤ 最高高度は概ね地表から400フィート(約120メートル)
操縦者は16歳以上であることが必須で、小型ドローンの遠隔操縦士免許を持っているか、免許保有者による監督が必要になります。また、米運輸保安局(TSA)による身元調査に合格しなければなりません。FAAは今後、目的の飛行が安全に行われることを証明できる操縦者に対して、一部の制限を免除する方針とのこと。
盗撮などプライバシーの問題に対応しているとは言えない規制ですが、そうした問題は主に米電気通信情報局(NTIA)の管轄となるようです。
無人航空機(UAV)を含む新たな規制ができるまでは、米国内でドローンを商業利用するためには、Section 333適用除外と免除・承認証明書(COA)が必要となっています。
ドローンを飛ばす場所に関する規制は、上記のような適用除外申請等で何とかなりそうですが、人間の目で確認できる範囲の飛行、これが一番のネックです。残念ながらこの規制は、配達ドローンを含め遠距離でのドローン運用の可能性を否定するものとなっています。
ドローンの商業利用を考えているアマゾンなどは、アメリカ企業でありながら、ドローンの研究開発はアメリカ国外で行っています。規制を厳しくしすぎると、産業として育つ芽を国外に流出させてしまうという見方もあり、非常に難しいところではあります。
3-3 商用ドローンの主な規制比較
主要な国の商用ドローンの規制を比較してみました。
① 操縦資格
・アメリカ 必要
・フランス 必要
・日本 不要
② 高度制限
・アメリカ 122m
・フランス 155m
・日本 150m
③ 飛行できる空域
・アメリカ 大都市、空港付近は禁止
・フランス パラシュート搭載で市街地近郊の飛行も可能
・日本 人口密集地や空港近くは原則禁止
④ 機体の登録
・アメリカ 必要
・フランス 必要
・日本 不要
⑤ 目視外飛行
・アメリカ 原則禁止
・フランス 条件付き可能
・日本 原則禁止
現在の日本では、ドローンを飛行させるために免許等は必要ありません。ドローンの操縦資格が定められていないのは日本だけです。「ドローン検定」という検定制度がありますが、主催会社が独自に審査・認定する民間資格なので、公的な効力はありません。
日本では機体を管理するための登録制度もありません。安全性の高い運用が行われているとは、ちょっと言い難い状況です。
また、目視外飛行が原則禁止されているアメリカと日本では、特に物流における商用利用はほぼできないと考えてよいでしょう。
4.まとめ
いかがでしたか?
ドローンは「人間ではできないこと」「人間がやりたくないこと」を担うことができます。また、人間のリスクを軽減させる一助となる、非常に便利なツールなのです。
しかしながら、まだまだ生活に根付く前の黎明期であり、様々な問題が噴出しています。
安価なドローンは子供でも買えてしまうほど手軽に入手できるため、個人が飛ばしたドローンの墜落事故が世界中で起こっています。また、カメラを搭載したドローンによって、他人の敷地内の覗き見や盗撮が可能になってしまうといったプライバシーの問題も重要です。
そして、テロなどへの悪用も懸念されます。日本でも首相官邸にドローンが墜落した事件が話題になりましたが、ドローンに対する警備がまだ確立されていないのです。
ですが、住み分けとルール作り、安全対策をきちんととれば、非常に大きなメリットがあります。そのメリットは、災害現場や空撮などといった特定カテゴリにとどまらず、国家レベルで経済や人間の生活を大きく変える可能性を秘めているのです。
世界各国で、規制と実用化の狭間に置かれているドローン。実用化が一気に進むか否か、ドローンからまだまだ目が離せません。