Claude の Chrome 拡張機能「Claude in Chrome」は、社員がサインインしているサイトを Claude が読み、クリックし、フォームに入力する仕組みです。Claude Desktop の Cowork には、これとは別に組み込みブラウザがあります。どちらも Team・Enterprise プランでは管理者が止めない限り既定で有効で、Enterprise の組み込みブラウザは2026年9月10日から既定オンに切り替わりました。
つまり情報システム部門が何も決めていなくても、社員のブラウザで Claude が動く状態になっている会社があります。この記事は、Anthropic のヘルプセンターと公式ドキュメント、Google の Chrome 管理ドキュメントを2026年10月13日時点で読み、管理者が決めるべきことを5つに絞って整理します。
対象は、Team または Enterprise で Claude を契約している、あるいは検討している会社の情報システム・総務・DX 推進の担当者です。社員向けの使い方ではなく、会社として「許すか・どこまで許すか・どう記録するか」を決めるための材料をまとめます。
結論 — 先に要点だけ
- ブラウザ操作は3種類ある。 Chrome 拡張の「Claude in Chrome」、Claude Desktop の「Cowork 組み込みブラウザ」、画面全体を操作する「コンピュータ操作」で、管理の場所も既定値も違う。コンピュータ操作は Team・Enterprise では現時点で提供されていない。
- 既定値は「オン」側に寄っている。 Claude in Chrome は Team・Enterprise とも既定で有効、Cowork の組み込みブラウザは Team が既定オン、Enterprise も2026年9月10日から既定オン。HIPAA 構成の組織だけが既定オフ。
- 最初に置くのは許可リスト。 サイトの許可リストとブロックリストは Claude in Chrome と組み込みブラウザで共通。公式も「制限の強い許可リストから始めて広げる」ことを勧めている。
- 承認モードの既定は「自動承認」。 Cowork サイドパネルは「Automatically approve」で始まり、安全チェックが各操作を審査する。ダウンロード・機微情報の入力・認可の付与は、常に許可を取る設計になっている。
- 記録は Enterprise だけが取れる。 Compliance API で拡張機能の組み込みチャットを「claude_in_chrome」セッションとして取得できる(ベータ)。Team 以下では OpenTelemetry のストリーミングはあるが、Compliance API による後からの取得手段はない。
3つの「ブラウザ操作」を区別する
社内で議論がかみ合わない原因の多くは、3つの機能を「Claude がブラウザを触る」と一括りにしていることです。公式ヘルプの説明に沿って分けます。
| 機能 | 何が動くか | 対象プラン | 管理者の設定場所 |
|---|---|---|---|
| Claude in Chrome(拡張機能) | 社員自身の Chrome。サインイン済みのサイトをそのまま操作する | Pro・Max・Team・Enterprise | Organization settings > Claude in Chrome |
| Cowork 組み込みブラウザ | Claude Desktop に内蔵されたブラウザ。通信は社員の端末から出る | Pro・Max・Team・Enterprise | Organization settings > Cowork |
| コンピュータ操作(ベータ) | デスクトップ全体。アプリを開き、クリック・入力する | Pro・Max のみ(Team・Enterprise は現時点で対象外) | 個人の Settings > General |
※ 出典: Claude in Chrome admin controls(取得 2026-10)/Use Claude Cowork on Team and Enterprise plans(取得 2026-10)/Let Claude use your computer in Cowork(取得 2026-10)
Claude in Chrome の提供状況には表記の揺れがあります。製品ページは「一般提供」と書き、ヘルプの入門記事(2026年8月26日付)は「Chrome のサイドパネルはベータ」と書いています。社内文書では「有料プラン全てで利用可、サイドパネルの一部機能はベータ」と書いておくのが安全です。対応ブラウザも入門記事では Google Chrome のみで、他の Chromium 系ブラウザとモバイルは非対応です。
※ 出典: Claude in Chrome 製品ページ(取得 2026-10)/Claude in Chrome の入門記事(Get started)(取得 2026-10)
Cowork の側でも関係が複雑です。Cowork は「組み込みブラウザ」と「社員の Chrome(Claude in Chrome 経由)」のどちらか、または両方を使えます。Enterprise では、Chrome 拡張のサイドパネルが Cowork セッションとして動くのは管理者が「Run Cowork in the cloud」を有効にした後で、それまでは従来型のサイドパネルです。
既定値の一覧 — 何も決めないとどうなるか
管理者が触れる設定と既定値を、2つのヘルプ記事から1つの表にまとめます。設定名は英語の管理画面のままです。
| 設定 | 場所 | Team の既定 | Enterprise の既定 |
|---|---|---|---|
| Enable for your team(Claude in Chrome) | Claude in Chrome | オン | オン(Owner が事前に無効化していない限り)。HIPAA 組織はオフ |
| Enable for your organization(Cowork) | Cowork | オン | オン。HIPAA 組織はオフ |
| Run Cowork in the cloud | Cowork | オン | オフ |
| 組み込みブラウザ | Cowork | オン | 2026年9月10日からオン(事前に管理者が切っていなければ)。HIPAA 組織はオフ |
| Allow "Automatically approve" mode | Cowork > Permissions | オン | オン |
| Allow "Always allow" for connector tools | Cowork > Permissions | オフ | オフ |
| 1Password for Claude(パスワード入力) | Claude in Chrome | オフ | オフ |
※ 出典: Claude in Chrome admin controls(取得 2026-10)/Use Claude Cowork on Team and Enterprise plans(取得 2026-10)
この表から読み取れることは2つあります。1つは、Team では「社員が拡張機能を入れた瞬間に、クラウド実行の Cowork サイドパネルとして動く」状態が既定だということです。もう1つは、Enterprise では Claude in Chrome 自体は既定オンでも、クラウド実行がオフなので従来型サイドパネルで動く、という段階差があることです。
Enterprise にはもう1つ注意があります。管理者が有効化しても、社員に自動では通知されません。有効化と同時に社内アナウンスを出さないと、「いつの間にか使えるようになっていた」状態になります。
決めること1 — 会社として有効にするか
最初の判断は「有効にするか」ではなく、「既定で有効になっているものを、このまま使わせるか」です。判断材料を順に並べます。
プランと費用。 Claude in Chrome は有料プラン全てで使えます。法人契約の料金は2026年10月時点の公式料金ページでは次のとおりで、ブラウザ操作のための追加料金はありません。
| プラン | 席料(年払い) | 席料(月払い) | 備考 |
|---|---|---|---|
| Team Standard 席 | $20/席/月 | $25/席/月 | 2〜150 席 |
| Team Premium 席 | $100/席/月 | $125/席/月 | 利用量の多い席向け |
| Enterprise | $20/席/月(年間契約のみ) | — | 利用量は API レートで別建て |
※ 出典: Claude 料金ページ(取得 2026-10)。税別・変更の可能性あり
規制データの有無。 HIPAA 構成の Enterprise では Claude in Chrome は既定オフで、Owner が有効にしても、サイトを個別に許可するか既定のサイトポリシーを変えるまでどのサイトも開けません。Anthropic との BAA(業務提携契約)は Claude in Chrome 経由で第三者サイトに送られたデータを対象にしていません。日本の会社でも、医療・金融・個人情報を日常的に扱う部門では、同じ考え方で「部門単位でオフ」を選ぶ根拠になります。
※ 出典: Use Claude in Chrome safely(取得 2026-10)/Use Claude Code with Chrome(取得 2026-10)
部門ごとの出し分け。 Enterprise では、Claude in Chrome の権限は組織全体のスイッチと、カスタムロールごとの権限の2段で制御できます。Claude in Chrome の権限は Cowork の権限とは独立で、Cowork を使える社員が自動的に Chrome 拡張も使えるわけではありません。Cowork 側もグループとカスタムロールで特定チームだけ有効にできます。
ゼロデータ保持(ZDR)との関係。 Claude in Chrome は Cowork と同じく ZDR に対応していません。API 契約で ZDR を前提にしている会社は、ブラウザ操作だけが別の保持条件になることを、契約担当と共有しておきます。
決めること2 — どのサイトを許すか
有効にするなら、次に置くのはサイトの許可リストです。公式の管理者向けヘルプが示す考え方はシンプルです。
- 許可リスト(Allowlist): Claude が操作できるサイトを指定したものに限る
- ブロックリスト(Blocklist): 他の設定にかかわらず、指定サイトを禁止する。Claude 側の既定ブロック(アダルト・海賊版)の上に重なる
- 推奨: 制限の強い許可リストから始め、様子を見て広げる
- 共通化: Claude in Chrome と Cowork 組み込みブラウザで1つのリストを共有できる
※ 出典: Claude in Chrome admin controls(取得 2026-10)
リストの限界も公式に書かれています。リストが縛るのは Claude が自分で移動して操作する URL です。組み込みブラウザでブロック対象の URL を社員が手入力すると、ページは表示され、「組織のポリシーでブロックされている」旨のバナーが出て、そのページでの Claude のツールが無効になります。閲覧制限ではなく「Claude の手を止める」仕組みだと理解しておくと、Web フィルタリング製品との役割分担がはっきりします。
もう1つの盲点は、ネットワーク側の制御との関係です。Cowork はコード実行の外向き通信(egress)設定に従いますが、この設定は Web 検索・Web 取得・MCP コネクタには適用されず、Claude in Chrome も対象外です。「egress を絞っているから大丈夫」は成り立たず、ブラウザ操作はブラウザ操作のリストで絞る必要があります。
※ 出典: Use Claude Cowork on Team and Enterprise plans(取得 2026-10)
許可リストの最初の候補を考えるときは、安全ガイドが「避けるべき」と明示している用途を外すところから始めます。金融口座や投資の管理、法的文書や契約の処理、医療・健康情報、機微な社内データを扱う業務アカウント、他人の個人情報を含むサイトの5つです。逆に「調べ物・フォーム入力のような単純な作業から、信頼できるサイトで始める」ことが推奨されています。
決めること3 — 承認モードと、社員に残す権限
サイトを絞った次は、1つ1つの操作を誰が承認するかです。社員が選べるモードは3つあります。
| モード | 動き | 備考 |
|---|---|---|
| Manually approve(手動承認) | 操作のたびに Claude が許可を求める | 従来型サイドパネルでは先に「使うサイトの計画」を提示し、計画外のサイトは別途承認 |
| Automatically approve(自動承認) | Claude が進めながら、各操作を安全チェックが審査する。危険と判断した操作は止めて確認する | Cowork サイドパネルの既定。利用枠の消費が他のモードより多い |
| Skip all approvals(全承認スキップ) | 止まらず、自動の審査も無い | 「関わる全てを完全に信頼できるときだけ」と公式が注記 |
※ 出典: Claude in Chrome permissions guide(取得 2026-10)
管理者が触れるのは、自動承認モードを社員に見せるかどうかです。Cowork の「Allow "Automatically approve" mode」をオフにすると、社員のモード選択肢から自動承認が消えます。コネクタの書き込み系ツールについては「Allow "Always allow" for connector tools」が既定オフで、オフの間は社員が以前に保存した「常に許可」も無効になり、タスクごとに承認が必要です。
サイト単位の権限は、社員側で「Allow this action(この操作だけ)」「Always allow actions on this site(このサイトでは常に許可)」「Decline(拒否)」から選びます。公式は「この操作だけ」を最も安全な選択肢としています。「常に許可」にしても、ファイルのダウンロード・機微情報の入力・認可の付与は毎回確認されます。
モードにかかわらず禁止されている操作も公表されています。購入や金融取引、アカウント作成、クレジットカード・身分証データの取り扱い、信頼できない提供元からのダウンロード、恒久的な削除、投資助言や売買、システムファイルの変更、そしてメールや Web ページに書かれた指示の実行です。最後の1つは、プロンプトインジェクション対策として明文化されている点で、社内ルールにそのまま引用できます。
社内ルールに落とすなら、最低限の線は次の3つです。
- 自動承認モードを許すか(許すなら、どの部門・どのサイトまでか)
- 「このサイトでは常に許可」を社員に使わせるか(使わせるなら対象サイトを列挙する)
- 社員が承認済みサイトを定期的に見直す手順(拡張機能の設定 > Permissions で確認・取り消しができる)
決めること4 — 配布と端末の統制
Claude 側の設定だけでは、拡張機能が「どの端末に、どの組織アカウントで」入るかは制御できません。ここは Chrome の管理と Claude Desktop の管理を組み合わせます。
配布の2経路。 社員が Chrome ウェブストアから自分で入れる経路と、Google Workspace の管理コンソールや MDM で特定のユーザー・グループに配る経路があります。試験導入の間は、既存の拡張機能管理でインストール先を限るのが公式の手順です。Google 側では、管理コンソールの「デバイス > Chrome > アプリと拡張機能」で、「全て許可して管理者がブロックリストを管理」「全てブロックして管理者が許可リストを管理」「全てブロックし、ユーザーは申請できる」の3方式から選べます。
※ 出典: Claude in Chrome admin controls(取得 2026-10)/Chrome のアプリと拡張機能のポリシーを設定する(Google)(取得 2026-10)
サインイン先の固定。 社員が個人の Claude アカウントで拡張機能にサインインすると、会社の許可リストも監査も効きません。Chrome のエンタープライズポリシー「forceLoginOrgUUID」を配ると、サインインできる組織を固定できます。Claude Code と組み合わせる場合、拡張機能と Claude Code が別の組織にサインインしていると接続できない仕様なので、この固定は運用上も役立ちます。
ネットワーク。 チャットの通信は従来どおり claude.ai・api.anthropic.com・platform.claude.com を通ります。加えて拡張機能は、Claude Desktop と同じブリッジ用のエンドポイント「bridge.claudeusercontent.com」に WebSocket で接続します。IP 許可リストを使っている組織では、ここが通らないと「Browser extension is not connected」のエラーになります。
拡張機能が要求する権限。 入門記事には、拡張機能が Chrome に要求する権限が理由付きで一覧化されています。実際にブラウザを操作する中核は「debugger」で、クリック・入力・スクリーンショットはこの権限で行われます。他に「tabs」「downloads」「nativeMessaging(Claude Desktop・Claude Code との連携)」「alarms(スケジュール実行)」などがあり、セキュリティ審査の資料としてそのまま使えます。
※ 出典: Claude in Chrome の入門記事(Get started)(取得 2026-10)
Claude Desktop・Claude Code からの操作。 拡張機能は Claude Desktop や Claude Code からも呼び出せます。Desktop 連携を止めるには、組織設定で拡張機能をオフにするか、Claude Desktop のエンタープライズ構成で「isLocalDevMcpEnabled」を無効にします。Claude Code では claude --chrome で接続し、拡張機能のバージョン 1.0.36 以上と、Anthropic 直接契約のプラン(Pro・Max・Team・Enterprise)が必要です。Amazon Bedrock などサードパーティ経由の契約では使えず、API キーや長期トークンでの認証でも Chrome 連携はオフのままになります。
管理者が Claude Code 側で止める方法も用意されています。管理設定の「deniedMcpServers」で claude-in-chrome サーバーを禁止するか、managed-mcp.json で許可セットに含めなければ、Claude Code は拡張機能のインストールを促す画面を出しません。リポジトリ側のプロジェクト設定から Chrome 連携を勝手にオンにすることはできない設計で、環境変数を仕込んでも無視されます。
※ 出典: Use Claude Code with Chrome(取得 2026-10)/Enterprise configuration for Claude Desktop(取得 2026-10)
決めること5 — 何が記録され、監査部門に何を渡せるか
ブラウザ操作で最も説明が難しいのが「Claude は何を見て、それはどこに残るか」です。
Claude が見るもの。 作業中のタブのスクリーンショットを撮り、画面に見えている内容は会話の一部になります。Claude は機微な内容を見分けて除外することができません。サイドパネルのセッションは履歴に保存され、他の端末からも開けます。公式はこの理由で、銀行・医療・行政のアカウントにアクセスできない別のブラウザプロファイルで使うことを勧めています。
※ 出典: Use Claude in Chrome safely(取得 2026-10)
Compliance API(Enterprise)。 拡張機能の組み込みチャットは、Compliance API のローカルセッションとして claude_in_chrome の product_surface で取得できます。対象は Claude Enterprise アカウントでサインインしている間のセッションで、Claude in Chrome の対応はベータです。書き起こしに含まれるのはプロンプト・回答・ツール呼び出しと結果で、思考ブロックと画像は含まれません。つまり Claude が撮ったスクリーンショットそのものは監査部門には渡りません。保持期間は既定で6年、組織が有限の保持期間を設定していればその期間です。HIPAA 対応を有効にした組織では、Cowork と Claude Code 以外のローカルセッションはそもそも取得対象外です。
※ 出典: Retrieve session transcripts(Compliance API)(取得 2026-10)
Compliance API の全体像と、監査部門に渡す前に決めることはClaude の利用記録を監査部門に渡すで整理しています。
OpenTelemetry(Team・Enterprise)。 Cowork の活動を自社のコレクタにストリーミングできます。送られるのはプロンプト本文、ツールと MCP の呼び出し(サーバー名・ツール名・パラメータ・成否・所要時間)、ファイルアクセス、スキルとプラグインの呼び出し、承認の判断(承認・拒否・既存の権限で自動許可)、API リクエストとトークン数・推定費用です。設定は Organization settings > Cowork で OTLP のエンドポイント・プロトコル・ヘッダーを入れるだけで、エンドポイントを入れない限り何も送られません。ブラウザ操作が個別のイベントとして出るかは記事に明記がないので、導入時に実機で確かめます。
※ 出典: Monitor Claude Cowork activity with OpenTelemetry(取得 2026-10)
端末に残る履歴。 ローカルで動いた Cowork の会話履歴は社員の端末に保存され、通常の保持ポリシーの対象外で、管理者が中央から削除できません。退職時の端末回収や初期化の手順に含めておく必要があります。
プロンプトインジェクションの実際 — 公表されている数字
「Web ページに仕込まれた指示で Claude が誤った操作をする」リスクは、Anthropic 自身が最初から公表しています。2025年8月25日の試験提供の発表では、Max プランの利用者1,000人を対象に始め、29の攻撃シナリオ・123件のテストで、対策なしの攻撃成功率 23.6% が、対策後の自律モードで 11.2% に下がったとしています。隠しフォームや URL・タブタイトル経由の攻撃など、ブラウザ固有の4種類では 35.7% から 0% になりました。
※ 出典: Piloting Claude for Chrome(Anthropic)(取得 2026-10)
同じ記事には、その後の展開も追記されています。2025年11月24日に Max プラン全員へのベータ、2025年12月18日に Pro・Team・Enterprise への拡大と Claude Code 連携、そして Team・Enterprise の管理者による組織全体の有効・無効とサイトの許可リスト・ブロックリストの提供です。
現行の安全ガイドでは、強化学習による拒否の学習、不審な内容を検出する分類器、きめ細かな権限、サイトのブロックリスト、高リスク操作の確認、各操作の自動審査、継続的なレッドチームの7層を挙げ、現在の構成では社内テストで攻撃成功率を 0.08% 未満に下げたと書いています。同時に「リスクはゼロではなく、新しい攻撃は現在の評価で捕捉できない可能性がある」とも明記しています。
※ 出典: Use Claude in Chrome safely(取得 2026-10)
管理者の立場では、この数字は「安心材料」ではなく「残りのリスクをどこで受け止めるか」を決める材料です。許可リストで操作先を絞り、承認モードで止める場所を作り、Compliance API や OpenTelemetry で後から追えるようにする。3層のどれかが欠けると、数字がどれだけ小さくても説明責任を果たせません。
社員側の見分け方も公式に書かれています。Claude が関係ない話題を始める、予期しないサイトに移動する、機微情報を求める、のいずれかが起きたらタスクを止めて報告する、という3点です。社内の利用ガイドラインにそのまま載せられます。
導入前のセルフチェックリスト(15項目)
管理者が設定画面を開く前に、紙の上で埋める項目です。
- Claude in Chrome の「Enable for your team」が今どちらになっているか確認したか
- Cowork の「Run Cowork in the cloud」と組み込みブラウザの状態を確認したか
- 規制データ(医療・金融・個人情報)を扱う部門を洗い出し、部門単位のオフを検討したか
- Enterprise ならカスタムロールで、どの部門に Claude in Chrome の権限を与えるか決めたか
- 最初の許可リストに入れるサイトを、業務の棚卸しから列挙したか
- ブロックリストに入れるサイト(社内の人事・経理システム、顧客 DB など)を決めたか
- 自動承認モードを社員に見せるか決めたか
- 「このサイトでは常に許可」を使ってよいサイトを決めたか
- 拡張機能の配布を自己インストールにするか、管理コンソール・MDM で配るか決めたか
- forceLoginOrgUUID で会社の組織にサインイン先を固定するか決めたか
- bridge.claudeusercontent.com を含む通信先を、ネットワーク担当と共有したか
- Claude Code・Claude Desktop からの呼び出しを許すか(isLocalDevMcpEnabled・deniedMcpServers)決めたか
- Compliance API または OpenTelemetry のどちらで記録を取るか、監査部門と合意したか
- 端末に残るローカル履歴を、退職・端末交換の手順に組み込んだか
- 有効化と同時に出す社内アナウンスと、社員向けの「止める・報告する」手順を用意したか
社内ルールのテンプレ(コピペ用)
既存の生成 AI 利用規程に追加する条文の雛形です。会社名・部門名・対象サイトは置き換えてください。規程全体の作り方は生成 AI の社内利用ガイドラインの作り方で扱っています。
第X条(ブラウザ操作型 AI の利用)
1. 会社が契約する Claude の Chrome 拡張機能および Cowork 組み込みブラウザ(以下「ブラウザ操作機能」)は、
情報システム部門が許可リストに登録したサイトに限り利用できる。
2. 利用者は、会社が指定する組織アカウントでのみサインインする。個人アカウントでの利用を禁止する。
3. 自動承認モードの利用は、情報システム部門が許可した部門・業務に限る。
「このサイトでは常に許可」の設定は、別表に定めるサイト以外では行わない。
4. 次の業務にはブラウザ操作機能を使用しない。
(1) 金融口座・決済の操作 (2) 契約書・法的文書の処理 (3) 医療・健康情報の取り扱い
(4) 顧客・従業員の個人情報を含むシステムの操作 (5) 会社が別途禁止したサイト
5. 利用者は、AI が関係のない話題を始める、予期しないサイトへ移動する、機微情報の入力を求める等の
挙動を認めたときは直ちに作業を中止し、情報システム部門に報告する。
6. ブラウザ操作機能で行われた操作の結果(送信・公開・入力・ダウンロード)は、操作を指示した利用者の
責任とする。
7. 情報システム部門は、Compliance API または OpenTelemetry により利用記録を取得し、
社内規程に定める期間保管する。
第6項は公式の安全ガイドが「ブラウザで Claude が行った操作の責任は利用者にある」と明記していることに対応します。公開した内容・送ったメッセージ・購入・アクセスや変更したデータ・第三者サイトの利用規約の遵守が例示されています。
失敗パターン5つ
- 「egress を絞っているから安全」と判断する。 Cowork の外向き通信の設定は Web 検索・Web 取得・MCP・Claude in Chrome に適用されません。ブラウザ操作はブラウザ操作のリストで絞ります。
- Team で契約し、設定を見ずに社員へ案内する。 Team は Claude in Chrome・クラウド実行・組み込みブラウザ・自動承認モードが全て既定オンです。案内の前に許可リストを置かないと、初日から全サイトが操作対象になります。
- 個人アカウントでのサインインを放置する。 会社の許可リストも Compliance API も、組織アカウントでサインインしているセッションにしか効きません。forceLoginOrgUUID と配布経路で固定します。
- スクリーンショットが監査記録に残ると思い込む。 Compliance API の書き起こしに画像は含まれません。「Claude が何を見たか」を後から完全に再現する手段は無い前提で、見せるサイトを前もって絞ります。
- 数字だけで安全性を説明する。 攻撃成功率の数字は公式が公表していますが、同じ記事が「ゼロではない」と書いています。経営層への説明は「許可リスト・承認・記録の3層で被害範囲を限る」構成にします。
公式リソース集
- Claude in Chrome admin controls — 組織の有効化・許可リスト・配布・ネットワーク・1Password
- Use Claude Cowork on Team and Enterprise plans — Cowork の管理設定・組み込みブラウザ・承認の既定値
- Claude in Chrome permissions guide — 3つのモード・サイト単位の権限・禁止操作
- Use Claude in Chrome safely — リスク・推奨・避けるべき用途・利用者の責任
- Claude in Chrome の入門記事(Get started) — 拡張機能が要求する権限の一覧
- Use Claude Code with Chrome — Claude Code からの接続条件と管理者の止め方
- Retrieve session transcripts(Compliance API) — claude_in_chrome セッションの範囲と保持
- Monitor Claude Cowork activity with OpenTelemetry — 送られるイベントと設定
- Chrome のアプリと拡張機能のポリシーを設定する(Google) — 管理コンソールでの許可・ブロック・配布
よくある質問
Q. Pro プランの社員が個人契約で Claude in Chrome を使うのは止められますか?
Claude 側の組織設定では止められません。個人アカウントのセッションは会社の設定の外です。止めるなら、Chrome の管理コンソールで拡張機能のインストールを制限するか、forceLoginOrgUUID で会社の組織以外へのサインインを禁止する方法になります。あわせて、個人アカウントでの業務利用を禁止する規程を置きます。
Q. 許可リストを置いたら、社員の普通のブラウジングも制限されますか?
されません。リストが縛るのは Claude が自分で移動して操作する先です。組み込みブラウザでブロック対象の URL を手入力した場合も、ページは表示され、Claude のツールだけが無効になります。社員の閲覧を制限したいなら、既存の Web フィルタリングで行います。
Q. Claude Code の開発者にだけブラウザ操作を許し、一般社員には許さないことはできますか?
できます。Enterprise ではカスタムロールごとに Claude in Chrome の権限を付けられ、Cowork の権限とは独立です。逆に開発者だけ止めたい場合は、Claude Code の管理設定で claude-in-chrome の MCP サーバーを禁止すると、インストールを促す画面も出なくなります。
Q. 自動承認モードは利用枠を多く使うと聞きました。費用に影響しますか?
公式の権限ガイドは、自動承認モードが他のモードより利用枠を多く消費すると書いています。Team は席料に利用枠が含まれる形なので追加請求ではなく上限到達が早まる影響、Enterprise は利用量が API レートで別建てなので費用に直接影響します。利用状況は管理画面の使用状況レポートで追い、部門ごとの上限と合わせて見ます。
Q. コンピュータ操作(デスクトップ全体の操作)も Team で使えますか?
使えません。公式ヘルプは、コンピュータ操作はベータで Pro・Max の Claude Desktop(macOS・Windows)が対象で、Team・Enterprise は現時点で対象外と書いています。法人で管理対象になるのは Claude in Chrome と Cowork 組み込みブラウザの2つで、この記事の範囲もその2つです。
次の一歩
まず、管理画面で「Organization settings > Claude in Chrome」と「Organization settings > Cowork」を開き、既定値の表と照らして現状を記録してください。次に、上のチェックリストの1〜8番を埋めれば、許可リストの初版と承認モードの方針が決まります。配布と記録(9〜15番)は、Chrome の管理担当と監査部門を交えて1回の打ち合わせで決められる分量です。
Claude の法人導入全体の経路や、管理者が最初に決める設定はClaude 導入支援のハブとClaude Code の法人導入ガイドで整理しています。既定値の棚卸しや許可リストの設計、社内規程への落とし込みで判断材料が足りない場合は、現状の契約プランと対象部門を添えてお問い合わせからご連絡ください。書面で整理してお返しします。
更新履歴
- 2026-10-14: 初版公開