「毎月、ネットバンキングとカードの明細をダウンロードして、スプレッドシートに貼り、科目ごとに集計している」。この作業は、経理の担当が月初に半日を使う典型的な定型業務です。Claude Code にスクリプトを書かせれば、集計そのものは短時間で終わります。ただし、明細には取引先名や振込人名が入っていること、集計表を作っても元の明細データを残す義務が別にあること、この2点を先に決めないと、楽になった代わりに別の問題を抱えることになります。
この記事では、Claude Code の公式ドキュメント、国税庁の電子帳簿保存法の一問一答(令和8年7月版)、個人情報保護委員会の注意喚起(2026年10月時点で開けるもの)だけを出典に、明細 CSV を月次の集計表にする手順と、数字の検算、電子帳簿保存法で残すべきものを整理します。読者は、中小企業の経理・業務改善・情報システムの担当者を想定しています。
結論 — 先に要点だけ
- 明細の生データを Claude に見せない。 振込人名や店名は個人情報になり得ます。Claude には匿名化した数行だけを見せ、本番の CSV は Claude が書いたスクリプトが手元で処理する構成にします
- 分類ルールは人が持つ。 摘要から科目への対応表を CSV で用意し、スクリプトは表を引くだけにします。表に無いものは「未分類」として人に返します
- 検算は5つの照合で機械化する。 件数の一致、入出金合計と残高差の一致、重複行、未分類件数、期間外の行。ひとつでも外れたら集計表を出力しない設計にします
- 集計表は帳簿の補助資料で、保存義務の対象は明細データ。 ネットバンキングやカードの明細は「電子取引」に当たり、日付・金額・取引先で検索できる形で残す必要があります。集計スクリプトに索引簿を一緒に出力させると、この要件に近づけます
- 保存は長い。 法人の帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から7年間、欠損金が出た事業年度は10年間です。集計表を作って元データを消す運用は成立しません
※ 出典: 国税庁 — タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(取得 2026-10)
対象になるデータ — 銀行とカードの CSV はどう違うか
銀行の入出金明細とカードの利用明細は、どちらも「取引年月日・金額・相手先」を持つ表ですが、形がそろっていません。集計スクリプトを書く前に、手元のファイルがどの型かを確認しておくと、Claude への指示が具体的になります。
| 項目 | 銀行の入出金明細 | カードの利用明細 |
|---|---|---|
| 1行の意味 | 口座の入金または出金ひとつ | カードの利用ひとつ(返品・分割の行が混ざる) |
| 金額の列 | 入金と出金が別の列、または符号付きの1列 | 利用金額の1列が多い |
| 日付 | 取引日(約定日と起算日が別の列のことがある) | 利用日と引落日が別 |
| 相手先 | 振込人名・振込先名(人名が含まれる) | 加盟店名(略称・カナ表記) |
| 残高 | 行ごとの残高列があることが多い | 無い(請求確定額が別に出る) |
| ファイルの癖 | 文字コードや先頭の説明行が金融機関ごとに違う | 月の締め日で区切られる |
この表は一般的な傾向の整理で、実際の列名・順序は金融機関・カード会社ごとに違います。スクリプトは「列名で読む」「列の位置で読まない」を基本にし、ファイルの先頭に説明行があれば読み飛ばす処理を入れます。
税務上は、どちらも「電子取引」の取引情報に当たります。国税庁のチェックシートは、インターネットのみで確認できるクレジットカード、ネットバンキング、水道光熱費などの明細書等があれば電子取引に該当すると明記しています。一問一答でも、インターネットバンキングを利用した振込等は電子取引に該当し、保存すべきデータは取引年月日・金額・振込先名等が記載されたデータだとしています(問10)。
※ 出典: 国税庁 — 電子取引データ保存要件チェックシート(令和6年11月)(取得 2026-10) ※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)(取得 2026-10)
先に決める3つのこと — 明細を Claude に見せる前に
判断1 — 明細に入っている個人情報をどう扱うか
銀行明細の振込人名は、取引先の担当者名や個人客の氏名であることがあります。個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、法に違反する可能性があるため、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を確認せよ、とも書いています。
※ 出典: 個人情報保護委員会 — 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)(取得 2026-10)/別添1 PDF
Claude Code の側の扱いは、契約の種類で分かれます。公式のデータ利用ページは、Team・Enterprise・API などの商用利用では、商用条件のもとで Claude Code に送られたコードやプロンプトを生成モデルの学習に使わないとしています。一方、Free・Pro・Max の個人プランは、利用者が設定で許可している場合に学習に使われます。会社の経理データを扱うなら、商用プランか API キーで動かすのが前提です。
※ 出典: Claude Code Docs — Data usage(取得 2026-10)
判断2 — 生データをどこまで見せるか
結論は「見せない」です。Claude に渡すのは、列名と数行の匿名化したサンプルだけにします。本番の CSV は、Claude が書いたスクリプトが手元の PC で読み、集計表を出力します。この構成なら、モデルに送られるのはサンプルとスクリプトと実行結果の要約だけです。
Claude Code では、ファイルの読み取りを拒否する権限ルールを書けます。公式ドキュメントは、特定のファイルやフォルダを Claude のファイルツールから読めなくするには Read(./.env) や Read(./secrets/**) のような Read の deny ルールを足すとしており、このルールは @ で参照したフォルダにも適用されます。本番の明細を置くフォルダに deny を掛けておけば、うっかり「このファイルを読んで」と頼んでも読まれません。
※ 出典: Claude Code Docs — Configure permissions(取得 2026-10)
判断3 — スクリプトが外に出ていかない仕組み
Claude が書いたスクリプトを Claude 自身に実行させるなら、サンドボックスを使います。公式ドキュメントによれば、サンドボックスは既定でオフで、/sandbox コマンドか設定の sandbox.enabled で有効にします。有効にすると、シェルコマンドの書き込みは作業フォルダと一時フォルダに限られ、ネットワークは直接外へ出られず、許可したドメイン(初期状態は空)だけに通ります。読み取りは既定では広いので、filesystem.denyRead で明細フォルダを塞ぎます。対象は macOS・Linux・WSL2 で、ネイティブ Windows では無効です。
※ 出典: Claude Code Docs — Configure the sandboxed Bash tool(取得 2026-10)
手順 — Claude Code にスクリプトを書かせる7ステップ
ステップ1 — フォルダを分ける
kessai-monthly/
├── CLAUDE.md # この仕事のルール(下の雛形)
├── sample/ # 匿名化した数行のサンプル CSV(Claude に見せる)
├── rules/categories.csv # 摘要 → 科目の対応表(人が管理)
├── raw/ # 本番の明細 CSV(Claude は読まない・deny)
├── out/ # 集計表・索引簿・検算ログ
└── scripts/ # Claude が書いたスクリプト
.claude/settings.json の permissions.deny に Read(./raw/**) を入れ、サンドボックスを使うなら sandbox.filesystem.denyRead にも同じフォルダを入れます。
ステップ2 — CLAUDE.md に仕事のルールを書く
# 月次の入出金集計
- raw/ の中身は読まない。構造は sample/ のファイルで判断する
- 列は列名で参照し、位置で参照しない。先頭の説明行は読み飛ばす
- 科目の分類は rules/categories.csv を引くだけ。表に無い摘要は「未分類」
- 出力は out/summary-YYYY-MM.csv、out/index-YYYY-MM.csv、out/check-YYYY-MM.log の3つ
- 検算(件数・合計・重複・未分類・期間外)が1つでも不一致なら summary を出力しない
- 外部ネットワークに接続するコードを書かない
ステップ3 — プランモードで設計を先に出させる
公式ドキュメントは、ディスクに触れる前に変更を確認したいときはプランモードに切り替えるよう案内しています。claude --permission-mode plan で起動するか、セッション中に Shift+Tab を押します。Claude はファイルを読んで計画を出しますが、承認するまで編集しません。ここで「サンプルの列名をどう解釈したか」「検算をどう実装するか」を文章で確認します。
※ 出典: Claude Code Docs — Common workflows(取得 2026-10)
ステップ4 — スクリプトを書かせる(プロンプト雛形)
sample/bank-sample.csv と sample/card-sample.csv を読んで、
raw/ 配下の同じ形式のファイルを月次で集計するスクリプトを scripts/ に書いてください。
要件:
1. 文字コードを判定して読む。先頭の説明行は列名の行まで読み飛ばす
2. 日付を YYYY-MM-DD に正規化し、--month 2026-09 で指定した月の行だけ対象にする
3. 銀行は「入金」「出金」を符号付きの1列に統合し、カードは利用金額を出金として扱う
4. rules/categories.csv(摘要の部分一致 → 科目)で科目を付ける。該当なしは「未分類」
5. out/summary-YYYY-MM.csv に 科目 × 件数 × 合計、out/index-YYYY-MM.csv に
連番・日付・金額・取引先・備考(元ファイル名と行番号)を出力する
6. 検算を out/check-YYYY-MM.log に書く。不一致があれば summary を出力せず終了コード 1
7. 外部ネットワークに接続しない。sample/ 以外のデータをこの会話に貼らない
@ でファイルを参照すると内容が会話に含まれますが、Read ツールの既定の上限(25,000 トークン)を超えるものや 256KB を超えるテキストは含まれません。サンプルが小さければ @sample/bank-sample.csv で十分です。
※ 出典: Claude Code Docs — Common workflows(Reference files and directories)(取得 2026-10)
ステップ5 — サンプルで動かし、検算ログを読む
本番の前に、サンプルだけで実行して out/check-*.log の各項目が「一致」になるかを見ます。わざと重複行を1行足したサンプルで、検算が落ちることも確かめます。検算が機能しないスクリプトは、正しい集計表を出していても信用できません。
ステップ6 — スプレッドシートに載せる
集計表の CSV をスプレッドシートに載せる方法は3つあります。
| 方法 | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 画面からインポート | 月1回・人が確認して貼る | 「現在のシートに行を追加」など6種類の取り込み方がある。区切り文字は自動検出・タブ・カンマ・カスタム |
Apps Script の Utilities.parseCsv | Drive に置いた CSV を定期的に取り込む | 2次元配列(文字列)が返るので、数値・日付への変換は自分で行う |
Sheets API の values.append | 社内システムから直接書く | valueInputOption が RAW だと文字列のまま、USER_ENTERED だと UI で入力したように解釈される |
※ 出典: Google ドキュメント エディタ ヘルプ — Import data sets and spreadsheets(取得 2026-10) ※ 出典: Apps Script — Class Utilities(parseCsv)(取得 2026-10) ※ 出典: Google Sheets API — Read and write cell values(取得 2026-10)
金額列は RAW で文字列として入れると合計できません。USER_ENTERED を使うか、スプレッドシート側で数値に変換します。日付も同様で、USER_ENTERED は「Mar 1 2016」のような入力を日付として解釈します。
ステップ7 — 定期化する前に止め方を決める
月次で無人実行するなら、毎月の実行ログ、失敗したときの通知、やり直しの手順を先に決めます。この部分は別記事「Claude Code を決まった時刻に動かす」と「自動化が止まっていないか確かめる」で扱っています。社内でこの手順を自分たちで組む場合の決め方と止め方は、企業向けの実務書にもまとめています。
数字の検算 — 集計表を信じる前の5つの照合
集計の正しさは、集計表を眺めても分かりません。別の経路で出した数字と突き合わせます。
| 照合 | 何と何を比べるか | 外れたときの典型原因 |
|---|---|---|
| 件数 | 元 CSV の行数(説明行を除く)と、集計に入った行数+期間外の行数 | 説明行の読み飛ばし過多、空行、改行を含む摘要 |
| 合計 | 入金合計 − 出金合計 と、月初残高と月末残高の差(銀行) | 入金・出金の列の取り違え、符号の反転、桁区切りカンマ |
| 重複 | 日付・金額・摘要が同じ行の組 | 同じ CSV を2回ダウンロードして両方置いた |
| 未分類 | 「未分類」の件数と金額 | 対応表の更新漏れ、加盟店名の表記ゆれ |
| 期間 | 対象月の外の日付を持つ行の数 | カードの利用日と引落日の混同、締め日のずれ |
合計の照合で残高差を使えるのは、残高列がある銀行明細だけです。カード明細は、カード会社が示す請求確定額と月の出金合計を人が比べる項目にします。この表に数値は出てきませんが、各項目を「一致/不一致」でログに残し、不一致が1つでもあれば集計表を出さない、という止め方を最初から組み込んでおくことが肝心です。
電子帳簿保存法で残すもの — 集計表ではなく明細データ
保存義務の対象
電子帳簿保存法の「電子取引」は、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引で、インターネット等による取引や、電子メールで取引情報をやり取りする取引が含まれます。国税庁の一問一答は、売上や仕入の注文書・請求書・領収書だけでなく、水道光熱費や旅費交通費のような事業上の費用も保存範囲に含むとしています(問2)。インターネットバンキングの振込は、金融機関の窓口で振込をした場合に受け取る書面の記載事項(取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータを保存します(問10)。オンライン上の通帳や入出金明細による保存も可能で、随時確認できる状態なら必ずダウンロードしていなくても差し支えないとされています(問11)。ただし、その確認可能な状態は保存期間が満了するまで続いている必要があります(問45)。
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)(取得 2026-10)
ここで大事なのは、Claude Code が出力する集計表は「保存義務の対象」ではなく、帳簿を作るための補助資料だという点です。集計表を作ったから元の CSV を消してよい、とはなりません。明細データ(CSV や PDF)は、金融機関のサイトで随時確認できる状態を保存期間中ずっと保てない限り、自社で残します。
3つの保存ルール
国税庁のパンフレット(令和6年11月)は、電子取引データの原則的な保存ルールを3つにまとめています。
| ルール | 内容 | 月次集計の設計との関係 |
|---|---|---|
| ① 改ざん防止の措置 | タイムスタンプ付きデータの受領/受領データへのタイムスタンプ付与/訂正・削除の履歴が残るシステムでの授受・保存/改ざん防止の事務処理規程の策定・運用・備付け のいずれか | 専用システムが無い会社は事務処理規程の方法。国税庁がサンプルの Word を配布 |
| ② 見読可能装置 | ディスプレイやプリンタ等の備付け | 性能・台数の要件は無い |
| ③ 検索機能 | 日付・金額・取引先の3要素で検索できること。加えて範囲指定・組み合わせ検索ができる、または税務調査時にダウンロードの求めに応じられること | 表計算ソフトの索引簿や、規則性のあるファイル名で満たせる |
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)(取得 2026-10) ※ 出典: 国税庁 — 参考資料(各種規程等のサンプル)(取得 2026-10)
③の索引簿は、パンフレットの例では「連番・日付・金額・取引先・備考」の5列です。月次集計スクリプトにこの5列の index-YYYY-MM.csv を一緒に出力させれば、集計と同時に索引簿の下書きができます。備考に元ファイル名と行番号を入れておくと、税務調査でデータを求められたときに該当ファイルへ戻れます。
検索要件が不要になる場合と猶予措置
一問一答の問48は、税務職員のダウンロードの求めに応じられる体制があれば範囲指定・組み合わせ検索の要件は不要で、さらに判定期間に係る基準期間の売上高が 5,000万円以下の事業者、または出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる事業者は、検索機能の要件がすべて不要になると説明しています。問51は、法人はその事業年度の前々事業年度の売上高で判断し、消費税を除いた税抜金額で、営業外収入や雑収入は含まないとしています。
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)問48・問51(取得 2026-10)
3つのルールに対応が間に合わない場合の猶予措置もあります。パンフレットによれば、所轄税務署長が「相当の理由」(人手不足、システム整備の資金不足、整備が間に合わない等。事前届出は不要)があると認め、かつ税務調査の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出の求めの両方に応じられるなら、電子取引データを保存しておくだけでよいとされています。つまり最低線は「消さずに保存する」です。
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)(取得 2026-10)
保存期間と、よくある細かい疑問
法人の帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要で、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です。一問一答は、電子取引データも各税法で定められた期間保存する必要があるとし、バックアップは法令上の要件ではないが望まれるとしています(問17)。
※ 出典: 国税庁 — タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(取得 2026-10)
| 疑問 | 一問一答の整理 |
|---|---|
| 検索項目の「取引金額」は税抜か税込か | 帳簿の処理方法に合わせるべきだが、受け取ったデータに記載の金額を使っても差し支えない(問57) |
| Excel や Word で受け取ったものを PDF に変換して保存してよいか | 取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法であれば認められる(問42) |
| クラウドや海外のサーバーに保存してよいか | 保存場所で速やかに画面・書面に出力できるなら保存場所に保存されているものとして扱われる(問28) |
| 従業員が立て替えた経費の電子領収書は | 会社の行為として行われたものは会社の電子取引。会社として集約して保存・管理するのが望ましい(問12) |
| 会計ソフトが API 連携や RPA で金融機関のマイページからデータを取る方式は | 令和9年1月1日以後に施行される規則第5条第5項第1号の「特定電子計算機処理システムを使用した授受」に該当する。手作業の登録が挟まると該当しない(問67) |
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)(取得 2026-10)
最後の問67は、Claude Code で組む自動化に直接かかわります。明細を取得して会計ソフトに登録するまでを完全に自動化した場合と、途中で人が手で登録する場合とで、制度上の扱いが分かれるという整理です。自社の構成がどちらに当たるか、重加算税の加重措置の除外など関連する制度の適用を受けるかは、顧問の税理士と確認してください。この記事は制度の案内であり、個別の税務判断ではありません。
導入前セルフチェックリスト(12項目)
- 使う Claude のアカウントが商用プラン(Team・Enterprise・API)である
- 本番の明細フォルダに
Readの deny ルールを入れた - Claude に見せるサンプルから、振込人名・加盟店名を伏せた
- 分類の対応表(摘要 → 科目)を人が管理するファイルにした
- 「未分類」の扱い(誰が、いつ、表に追記するか)を決めた
- 検算5項目をログに残し、不一致なら集計表を出さない設計にした
- 検算が落ちることを、わざと壊したサンプルで確かめた
- 索引簿(連番・日付・金額・取引先・備考)を一緒に出力している
- 元の明細データ(CSV・PDF)の保存場所と保存期間(7年・10年)を決めた
- 改ざん防止の方法(事務処理規程など)を決めて備え付けた
- 検索要件の免除に当たるか(前々事業年度の売上高)を税理士に確認した
- 月次の実行ログと失敗時の連絡先を決めた
※ 出典: 国税庁 — タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(取得 2026-10)/国税庁 — 電子取引関係(特設サイト)
よくある失敗パターン 5つ
- 明細を会話に貼って「集計して」と頼む。 生データがモデルに送られます。個人情報の扱いの確認が済んでいない状態では避け、スクリプト方式に切り替えます
- 分類をモデルの判断に任せる。 同じ摘要が月によって別の科目になり、前月比の増減が説明できなくなります。対応表方式にします
- 集計表だけ残して元 CSV を消す。 保存義務の対象は明細データです。集計表は補助資料にすぎません
- 検算を「目で見て確認」にする。 件数・合計・重複・未分類・期間の5つを機械で照合し、ログに残します
- カードの利用日と引落日を混ぜる。 月をまたぐ行が二重計上や計上漏れになります。どちらの日付で集計するかを最初に決め、CLAUDE.md に書きます
公式ドキュメント・リソース集
- 国税庁 — 電子帳簿保存法関係(入口)
- 国税庁 — 電子帳簿保存法の概要
- 国税庁 — 電子取引関係(特設サイト・パンフレットとチェックシート)
- 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答(Q&A)
- 国税庁 — 参考資料(索引簿の作成例・事務処理規程のサンプル)
- 個人情報保護委員会 — 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について
- Claude Code Docs — Data usage
- Claude Code Docs — Configure permissions
- Claude Code Docs — Configure the sandboxed Bash tool
- Claude Code Docs — Common workflows
- Anthropic Privacy Center — Is my data used for model training?
- Google Sheets API — Read and write cell values
よくある質問
Q. 明細 CSV をそのまま Claude Code に読ませて集計してもらえば済みませんか?
読ませた内容はモデルに送られます。明細には振込人名などの個人情報が含まれるため、個人情報保護委員会の注意喚起に沿って利用目的の範囲と学習利用の有無を先に確認し、Claude には匿名化した数行のサンプルだけを見せてスクリプトを書かせ、本番の CSV はそのスクリプトが手元で処理する形が安全です。商用プランでは学習に使われない方針が公式に示されていますが、見せる範囲を最小にする設計はそれでも必要です。
Q. Claude Code が作った集計表を保存しておけば、電子帳簿保存法の対応になりますか?
なりません。保存義務の対象は取引情報そのもの、つまり金融機関やカード会社から受け取った明細データです。集計表は帳簿を作るための補助資料にあたります。元の明細データを日付・金額・取引先で検索できる形で残し、改ざん防止の措置をとるのが本筋です。集計スクリプトに索引簿を一緒に出力させると、この要件に近づけます。
Q. 検索要件の免除を受けられる会社の条件は何ですか?
国税庁の一問一答では、法人は前々事業年度の売上高が 5,000万円以下かどうかで判断し、該当すれば税務調査のダウンロードの求めに応じられる体制があれば検索機能の要件が不要とされています。売上高は税抜で、営業外収入は含みません。出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる場合も同様です。詳細は顧問の税理士に確認してください。
※ 出典: 国税庁 — 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)問48・問51(取得 2026-10)
Q. 集計の分類(勘定科目の当て込み)も Claude に任せてよいですか?
分類は人が決めたルール表にもとづいてスクリプトが機械的に当てるのがよいです。ルール表に無い摘要は未分類として残し、人が確認して表に追記します。モデルが毎回その場で判断する方式にすると、同じ摘要が月によって違う科目に振られ、検算で原因を追えなくなります。対応表を育てることが、この自動化の資産になります。
次の一歩
まず、手元の銀行とカードの CSV をひと月分だけ用意し、振込人名と加盟店名を伏せたサンプルを数行作ってください。次に、この記事のステップ2の CLAUDE.md と、ステップ4のプロンプト雛形をそのまま使い、プランモードで設計を出させます。検算が落ちることを確認してから、本番のフォルダで動かします。並行して、元の明細データの保存場所と改ざん防止の方法を決め、検索要件の免除に当たるかを顧問の税理士に確認してください。
「社内の経理フローに合わせてどこまで自動化するか」「明細の個人情報をどう扱うか」で判断に迷う場合は、現状のフォルダ構成と月次の作業手順を添えてお問い合わせからご連絡ください。Claude 導入の全体像は Claude 導入支援、業務自動化の考え方はサービス一覧にまとめています。
更新履歴
- 2026-10-15: 初版公開