ECとSNSを別々に外注する「分業体制」の課題
ECサイトの運用代行はA社に、SNSの運用はB社に。この「分業体制」を取っている事業者は多い。
EC事業者を対象にした業界調査でも、SNS活用に取り組みながら「効果を実感できていない」企業が51.9%と過半数を占めています。課題として挙がる上位は運用人材の不足(51.7%)と投稿ネタの不足(46.0%)。SNSで反応の良かった商品情報がEC側に共有されない、ECのセール情報がSNSに反映されるのに時間がかかる、といった「情報の分断」は、この人材・運用リソース不足と地続きの問題です。
※ 出典: デジタルシェルフ総研(株式会社いつも)「EC事業者のSNS利用実態調査レポート」(EC事業者205社/2021年4月調査・取得 2026-06)
この記事では、EC運用とSNS運用を別々に外注する分業体制でよく起きる課題と、一括運用へ切り替える際の進め方・チェックポイントを整理します。
パターン1 — アパレルEC:SNSとECの「連動の遅れ」
レディースアパレルのように新作の入れ替わりが速い商材では、SNSとECの連動の遅れが機会損失に直結しやすい。Instagramで新作を紹介しても、ECサイトの商品ページに反映されるのが翌週。タイムセールの告知がSNSに出るのは開始から数日後。こうした「タイムラグ」が分業体制では起きがちです。
アパレル・ファッションは、消費者がSNSをきっかけに商品を知る代表的なカテゴリでもあります。Glossomの定点調査では、SNSで商品を知るきっかけになった商材として「衣服・ファッション」が16.9%で最も高く、購入時に参考にするSNSはInstagramが14.6%でトップでした。SNSで関心を引いた瞬間にEC側がすぐ受け止められるかどうかが、この連動の鍵になります。
※ 出典: Glossom「ソーシャルコマースに関する定点調査2022」(MarkeZine 記事)(取得 2026-06)
切り替えで効きやすいのは、Instagram投稿とEC商品ページの同時更新フロー、ストーリーズからECへの導線設計、SNSで反応の良い商品をECトップに反映する仕組みづくり。連動の速度が上がるほど、SNSで生まれた関心を取りこぼしにくくなる傾向があります。
パターン2 — 食品EC:SNS運用の「属人化」
社員が兼務でSNSを回しているケースでよく起きるのが、運用の属人化です。担当者が変わるたびにトーンが変わってフォロワーが離れる、担当者の異動・退職で更新が止まる、といった問題が起きやすい。EC側との情報共有も「今週のセール商品なんでしたっけ」というチャットが飛ぶ程度に留まりがちです。
これは特定企業に固有の話ではありません。前述の業界調査でも、EC事業者がSNS運用で抱える課題の上位は運用人材の不足(51.7%)と投稿ネタの不足(46.0%)であり、属人化とリソース不足は業界全体で共通する構造的な課題です。
※ 出典: デジタルシェルフ総研(株式会社いつも)「EC事業者のSNS利用実態調査レポート」(EC事業者205社/2021年4月調査・取得 2026-06)
属人化への対処として有効なのは、コンテンツカレンダーの統合管理、商品撮影をEC用とSNS用で同時に行う運用、LINE・メルマガのセグメント配信、レビュー投稿のSNS転載フローなど。「担当者の頭の中」に依存しない仕組みに移すほど、運用は安定しやすくなります。
パターン1 — アパレルEC
パターン2 — 食品EC
パターン3 — 雑貨EC
パターン3 — 雑貨EC:分業による「重複コスト」
EC運用代行とSNS運用代行を別々の会社に発注していると、情報の分断と費用の重複が起きやすくなります。EC代行が作るバナーとSNS代行の投稿デザインのトーンが合わない。両社に同じ商品情報を別々に共有する手間。レポートも別々に届き、統合的な分析がしにくい。
SNS運用代行をまとめて委託すると毎月の運用費がかかり、これにEC側の運用代行が別途加わると総額は膨らみます。発注先を分けるほど、金額そのものに加えて「すり合わせの手間」という見えにくいコストも増えていきます。
切り替えで効きやすいのは、デザインガイドラインの統一、EC広告とSNS広告の予算配分の統合最適化、一元レポートによるPDCAの高速化。発注先と情報を一本化することで、重複した共有作業やトーンのズレを減らしやすくなります。
分業体制と一括運用の比較(一般的な傾向の概念図)
一括運用サービスの進め方
「一括運用に切り替えたい。でもどう進めるのか」。一般的な進め方を、3つのステップで整理します。
まずは現状分析。EC売上データ、SNSアカウントの状態、現在の広告実績を一括で棚卸しして、改善ポイントを洗い出します。
次に戦略設計。EC施策とSNS施策を連動させた統合マーケティング計画を立てます。「この商品をSNSで先行告知→ECで販売開始→購入者レビューをSNSで拡散」という一連の流れを設計するイメージです。
そして運用実行。商品登録、SNS投稿、広告出稿、顧客対応を一元管理する体制で回し、週次でデータを共有し、月次で戦略をレビューします。
※ 各ステップに要する期間は、商材数・既存アカウントの状態・広告規模によって前後します。上記は一般的なフローの目安です。
現状分析
EC売上データ・SNSアカウント・広告実績を一括で診断
戦略設計
EC施策とSNS施策を連動させた統合マーケティング計画
運用実行
商品登録・SNS投稿・広告出稿・顧客対応を一元管理
改善報告
週次データ共有+月次戦略レビューでPDCAを高速回転
一括運用を検討するためのチェックリスト
EC・SNSの一括運用を検討する際に確認すべき項目を整理しました。
最も重要なのは「現状の数字の把握」。EC売上、SNSフォロワー数、広告費の3つがベースライン。これがないと、一括運用に切り替えても成果を測定できません。
SNS運用代行の費用は、投稿のみの軽い委託から運用まるごとの委託まで、業務範囲によって大きく幅があります。EC運用代行を別途発注している場合、発注先を一本化することで「すり合わせの手間」を含めた総コストを抑えやすくなる傾向があります。見積もりは金額だけでなく作業内容ベースで比較するのが現実的です。
分業の「情報コスト」を過小評価しない
EC運用とSNS運用を別々の業者に外注するコストは、請求書に載る金額だけではありません。「情報の共有コスト」「デザインの不一致」「レポートの統合作業」といった、社内担当者の作業時間に化けて見えにくくなる負担があります。発注先が増えるほど、このすり合わせの手間も積み上がっていきます。
ここまでの3つのパターンが示しているのは、一括運用の最大の価値が「情報の一元化」にあるということです。施策の連動速度が上がり、無駄な重複作業が消える。SNSで効果を実感できていない企業が過半数(51.9%)に上る現状を踏まえると、運用体制そのものを見直すことが成果につながりやすい局面だと言えます。
※ 出典: デジタルシェルフ総研(株式会社いつも)「EC事業者のSNS利用実態調査レポート」(EC事業者205社/2021年4月調査・取得 2026-06)
EC市場全体は引き続き拡大基調にあり、物販系BtoC-ECの規模は2024年度に26.1兆円(前年比5.1%増)に達しています。SNSとECを連動させた運用設計の重要性は、今後も高まっていく見通しです。
※ 出典: 経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(取得 2026-05)
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