クリニックや歯科医院のホームページを担当している方、あるいは医療機関のサイトを制作・運用している制作会社の方に向けた記事です。厚生労働省は 2026年3月30日、医療機関の広告ルールを定める指針を「医療広告等ガイドライン」に改め、同日付で Q&A と「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」を更新しました。
この記事では、3つの一次資料を読み、何が変わり、自院サイトのどこを点検すべきかを整理します。特に、新設されたオンライン診療受診施設の規制、第6版で追加された SNS・動画・自由診療の事例、そして違反したときの流れと罰則を、原文の表現に沿ってまとめます。最後に、印刷して使える20項目の点検表と、自由診療ページにそのまま置ける記載ブロックの雛形を用意しました。
結論 — 先に要点だけ
- 指針の名称が「医療広告等ガイドライン」に変わりました。 医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)で「オンライン診療受診施設」が創設され、その広告を制限する規定(法第6条の7の2)が新設されたためです。病院・診療所の広告ルール自体は従来どおりです。
- 既存のクリニック・歯科サイトに対する禁止事項と、自由診療の「限定解除」4要件は変わっていません。 ただし事例解説書第6版は、複数の自由診療を1ページで一括表示する事例や、SNS・動画の事例を新たに加え、点検の基準は細かくなりました。
- SNS と動画は、投稿・返信・概要欄・コメント欄まで含めて1つの広告として判断されます。 自由診療の内容・費用・リスクは「一体的かつ一覧性をもって」近くに置く必要があり、別サイトへ送るだけでは足りません。
- 規制の対象は「何人も」で、制作会社や広告代理店も是正命令や罰則の対象になります。 Q&A(Q5-2)が明記しています。納品前の点検は制作側の義務でもあります。
- オンライン診療受診施設を設置・提携する場合だけ、新しい表示義務が生じます。 「この施設は医療機関ではなく、○○医療機関が診療を行う」旨を、視認性の高い形で明示することが要件です。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)PDF(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF(取得 2026-10)
2026年3月30日に何が変わったか — 3つの文書の改正点
今回の改正は、1つの通知ではなく3つの文書が同日に更新されています。サイト担当者が読むべき順番は「事例解説書 → Q&A → ガイドライン本文」です。事例解説書は図版中心で、自院サイトのどのブロックが問題になるかを最も具体的に示しています。
| 文書 | 2026年3月30日の改正内容 | サイト担当者が読む箇所 |
|---|---|---|
| 医療広告等ガイドライン(医政局長通知 別紙3) | 名称を「医療広告ガイドライン」から変更。令和7年法律第87号による見直しの節(第1-1(2))、オンライン診療受診施設の広告の定義(第2-1-2)と広告可能事項(第4)を新設 | 第2(広告の定義)、第3-1(禁止広告)、第3-3(限定解除の4要件)、第5(相談・指導・罰則) |
| 医療広告等ガイドラインに関するQ&A | ガイドライン名称を更新した10問に加え、Q2-11(SNS の感想)と Q3-22(「痛くない治療」「99%の満足度」)を更新、Q4-1・Q4-2(オンライン診療受診施設の表示文言・類似名称)を追加 | Q2-11、Q3-22、Q4-1、Q4-2、Q5-2 |
| 事例解説書(第6版) | 自由診療における限定解除要件を満たしていない事例と、SNS・動画における広告事例を拡充。第1章ウェブサイト(事例1〜38)、第2章 SNS・動画(事例39〜49)の構成 | 新規作成の事例(28)個別具体例6/6・(41)・(49)、更新の事例(28)個別具体例2/6・(47) |
※ 出典: 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について」(事務連絡・令和8年3月30日)PDF(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF 改訂履歴(取得 2026-10)
事務連絡は第6版の拡充点を「自由診療における限定解除要件を満たしていない事例や、SNS・動画における広告事例等について内容を拡充」と説明しています。つまり厚生労働省のネットパトロールで実際に見つかっている違反の中心が、この2領域だということです。
法改正の背景 — オンライン診療受診施設と法第6条の7の2
名称変更の理由は、オンライン診療を医療法に位置づける改正です。令和7年法律第87号は、医療法にオンライン診療の定義(法第2条の2第1項)を置き、患者がオンライン診療を受ける場所を提供する「オンライン診療受診施設」(同条第2項)を創設しました。Q&A によれば、この部分は令和8年4月1日から施行されています。
受診施設は自ら医療を提供する施設ではありません。しかし「患者がオンライン診療を受けられる場所」である以上、営業時間や設備の広告であっても患者への誘引性があります。そこで法第6条の7の2が新設され、省令第1条の10の2が定める要件を満たす場合に限って広告できることになりました。
要件の中心は、「オンライン診療受診施設が医療を提供するものではない旨を、医療を受ける者が理解できる方法により明示」することです。Q&A(Q4-1)は、極端に小さな文字など視認性が低い表示は認められないとし、次の文言例を挙げています。
- 「オンライン診療は、当施設が提供するものではなく、○○医療機関と連携して実施しております。」
- 「この施設は医療機関ではなく、○○医療機関が診療を行うものです。」
- 「この施設では、提携する××診療所(の医師)が診療を行います。」
「△△医師が診療を行っています。」だけでは不十分とされています。また Q4-2 は、受診施設でない施設が「オンライン診療受診ブース」「オンライン診療スポット」のような紛らわしい名称を付けることを不可としています。広告できる受診施設は法第8条第2項の届出を行ったものに限られ、連携する具体的な医療機関名を明示することが望ましいとガイドライン第4は述べています。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第1-1(2)・第2-1-2・第4(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q4-1・Q4-2(取得 2026-10)
クリニック側の実務への影響は限定的です。自院がオンライン診療を実施している旨は従来どおり広告可能です(Q3-27)。受診施設を自ら設置する、または受診施設と提携して患者を受け入れる場合に、上の明示文と届出の確認が新たに必要になります。
自院サイトはどこまでが「広告」か — 誘引性・特定性で判断する
医療広告に該当するかは、①患者の受診等を誘引する意図(誘引性)、②医療機関名や医師名が特定可能(特定性)、③医業・歯科医業または病院・診療所に関する内容、の3要件で判断します。自院の公式サイトは原則としてすべて該当します。事例解説書は、サイト以外の媒体についても次のように整理しています。
| 媒体 | 広告に該当するか | 根拠 |
|---|---|---|
| 自院ホームページ(会員限定ページを含む) | 該当。閲覧者を限定しても禁止広告は認められない | 事例解説書 事例(38) |
| 自院の公式 SNS アカウント | 該当。プロフィール・投稿・返信・ハッシュタグが対象 | 事例解説書 事例(39) |
| 医師・スタッフの個人アカウント | 医療機関・医師への特定性と誘引性をいずれも有する場合は該当 | 事例解説書 事例(39) |
| 第三者の口コミサイト・個人 SNS の感想 | 医療機関が費用負担などの便宜を図って掲載を依頼するなど誘引性が認められない場合は該当しない | Q&A Q2-11 |
| バナー広告・リスティング広告 | 該当。限定解除の要件①を満たさないため広告可能事項しか書けない | 事例解説書 事例(36)(37) |
| 「これは広告ではありません」と書いた記事風ページ | 病院名や連絡先から特定できれば広告として扱う | ガイドライン 第2-2 |
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第2-1・第2-2(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(36)〜(39)(取得 2026-10)
注意したいのは、第三者サイトの口コミでも、医療機関が依頼や対価で関与した瞬間に誘引性が生まれる点です。Q1-18 は、口コミサイトの運営者が否定的な体験談を削除したり肯定的なものを上位に表示したりする編集を医療機関の依頼で行えば誘引性が生じるとしています。口コミの依頼ルールは、別記事「口コミの依頼はどこまで許されるか」で消費者庁と Google のルールと合わせて整理しています。
禁止される表現 — 事例解説書に載った実例で確認する
禁止広告は、法第6条の5第1項の虚偽広告と、同第2項・省令第1条の9による比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する広告、治療内容・効果に関する体験談、誤認させるおそれのある治療前後の写真の6種類です。限定解除をしても、この6種類は書けません。事例解説書に掲載された表現を、自院サイトで検索しやすい形に並べます。
※ 出典: 下表の表現はすべて厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF(取得 2026-10)に掲載された事例から引いています。
| 事例解説書にある表現 | 区分 | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 「どんなに難しい手術でも必ず成功させます」「絶対安全な治療」 | 虚偽広告 | 医学上あり得ない内容 |
| 「1日で全ての治療が終了します」「即日インプラント治療」 | 虚偽広告 | 定期的な処置が必要なのに短期間で終わると表現 |
| 「全身脱毛 回数無制限プラン」「3年間し放題」 | 誇大広告 | 毛周期の関係で実際の回数は限られる |
| 「GLP-1製剤が保険適用になりました!」(自由診療のダイエット目的で) | 誇大広告 | 自由診療が保険診療になったと誤認させる |
| 「すぐに医薬品のお受け取りが可能!」 | 誇大広告 | 処方箋医薬品を必ず受け取れると期待させる。「医師の判断によりお薬を処方できない場合があります」などの併記が最低限必要 |
| 口コミサイトの投稿を「患者様の声」として自院サイトに転載 | 体験談(省令禁止事項) | 医療機関に有利な感想を取捨選択して掲載 |
| 治療内容・費用・リスクの説明がないビフォーアフター写真 | 省令禁止事項 | 詳細な説明を付した場合のみ掲載可能 |
| 「患者様満足度 99%」「成功率は 97.5%」(根拠の提示なし) | 虚偽広告 | 調査方法など根拠を明確にせず結果だけを示す。満足度調査は「実施している旨」「結果を提供している旨」「入手方法」までが広告可能 |
| 「県内のA病院より 5,000円以上お安く」「治療実績 県内1位」 | 比較優良広告 | 他院との比較、最上級表現 |
| 「モニター価格 50% OFF」「通常価格 50,000円がモニター価格 0円」 | 品位を損ねる広告 | 費用を強調した広告は医療広告として適切ではない |
※ 出典: 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(1)(2)(9)(10)(17)(22)(34)(36)(38)(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第3-1(取得 2026-10)
Q&A の判断も押さえておくと点検が速くなります。「最新の治療法」は事実と認められる範囲なら禁止ではありませんが、より新しい方法が定着した後も使い続けると虚偽・誇大のおそれがあります(Q2-1)。「2週間で90%の患者で効果がみられます」のような治療効果の表現は広告できません(Q2-16)。歯科でよく見る「歯を削らない痛くない治療(99%以上の満足度)」は、「歯を削らない」は適正な範囲なら可、「痛くない」は科学的根拠がなく不可、「99%の満足度」は求められれば合理的な根拠を示して客観的に実証できる必要がある、と3つに分解されています(Q3-22)。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q2-1・Q2-16・Q3-22(取得 2026-10)
自由診療ページの限定解除 — 4要件と第6版で追加された事例
広告可能事項は法第6条の5第3項と広告告示で限定されていますが、省令第1条の9の2の要件を満たすと限定が解除され、他の事項も書けるようになります。自院サイトに治療の詳しい説明や未届出の専門資格、メディア掲載などを載せられるのは、この限定解除があるからです。要件は4つで、③④は自由診療について情報提供する場合に限ります。
| 要件 | 内容 | サイトでの実装 |
|---|---|---|
| ① | 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告 | 通常の自院サイト、メルマガ、求めに応じて送るパンフレットは該当。バナー・リスティング広告は該当しない |
| ② | 表示される情報について患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載するなどの方法で明示 | 電話番号・メールアドレスなどをページ内に明示する |
| ③ | 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項 | 通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数。費用が一定しない場合は最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)の範囲 |
| ④ | 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項 | 利点だけを強調せず、主なリスクや副作用を分かりやすく掲載 |
③④の情報は「リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと」とされています。料金表だけ別ページ、リスクはフッターの小さな注記、という構成はこの一文に抵触します。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第3-3(取得 2026-10)
未承認医薬品等を使う自由診療は5項目の追記が必要
医薬品医療機器等法の承認を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品、または承認とは異なる効能・効果や用法・用量で使う場合(適応外使用を含む)は、限定解除の要件として次の5項目も十分に記載する必要があります。
- 未承認医薬品等であることの明示
- 入手経路等の明示(医師の個人輸入なら、その旨と厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページの案内)
- 国内の承認医薬品等の有無の明示(同一成分・性能の承認品があれば、その情報と流通管理などの承認条件)
- 諸外国における安全性等に係る情報の明示(主要な欧米各国で承認がなければ、重大なリスクが明らかになっていない可能性がある旨)
- 医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の対象にならないことの明示
事例解説書の事例(29)は、通常の限定解除要件(治療内容・費用・期間・回数・リスク)だけを満たした未承認医療機器のページを「要件を満たしていない」例として挙げ、上の5項目を加えた改善例を並べています。美容皮膚科の機器治療、AGA の内服薬、GLP-1 製剤のダイエット目的での処方など、適応外使用が多い領域ほど点検が必要です。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第3-3 2 (ⅰ)〜(ⅴ)(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(29)(30)(31)(取得 2026-10)
第6版で新規作成された「一括表示」の事例
第6版で新規作成された事例(28)個別具体例6/6は、「複数治療・複合内服セットを1ページで一括表示し、限定解除要件の情報をまとめて掲載している事例」です。複数の内服薬を「ベーシックプラン」「プレミアムプラン」として束ね、副作用・リスクをセット単位で「発疹、吐き気、胃痛」とまとめて書いたページが、限定解除要件を満たしていない表現として示されました。
解説は、各治療・薬剤ごとに本来異なる治療内容やリスク・副作用、適応外使用の有無がまとめて記載されているため、個別に必要な情報が十分に示されていない、と述べています。改善例では、薬剤ごとに「主なリスク・副作用」「用法・用量」「服用期間の目安」を分けて記載しています。セット販売やコース料金のページを持つクリニックは、この事例に照らして構成を見直す必要があります。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(28)個別具体例6/6(取得 2026-10)
SNS と動画 — 第6版が明確にした3つのルール
第2章「SNS・動画広告における事例」は事例(39)〜(49)で、第6版では SNS の体験談(事例41)と動画の自由診療における限定解除(事例49)が新規作成、動画のビフォーアフター写真(事例47)が説明の追加・修正で更新されました。実務で押さえるルールは3つです。
1つ目は、投稿の構成要素すべてが広告になることです。 SNS はプロフィール・投稿・返信のいずれかに虚偽・誇大・比較優良・体験談などが含まれていれば違反です。ハッシュタグも広告の一部で、投稿内容と関係のないハッシュタグによる誘引は不適切とされています。動画はタイトル・映像・音声・概要欄・コメント欄が対象で、患者が映像の中でリスクや副作用について述べていても体験談とみなされます。
2つ目は、自由診療の情報は「一体的かつ一覧性をもって」示すことです。 治療内容・費用・主なリスク・副作用は、プロフィール・投稿・返信の中またはその組み合わせで、まとめて確認できる形で提供しなければ違反です。SNS の1つの投稿は単独で1つの広告として扱われるため、各投稿内で必要な情報が完結している必要があります。別の SNS に分散して書く構成は、いずれか1つでは情報が足りないため違反例に挙げられています。改善例は、固定した投稿に情報をまとめて「詳細は1投稿目をご覧ください」と近傍で示す形です。
3つ目は、ビフォーアフター画像の近くに説明を置くことです。 画像の付近に治療内容・費用・主なリスク・副作用が一体的に示されていなければ違反です。動画の事例(47)は、概要欄に「個人差はありますが、1回目から効果を実感できます!」「¥20,000〜利用可能です」と書いただけの構成を違反例とし、工程・期間と回数・費用の範囲・リスクを概要欄にそろえた改善例を示しています。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 第2章 事例(39)〜(49)(取得 2026-10)
一定期間で限定公開される動画(いわゆるストーリーズ形式)も「投稿」に含まれると明記されています。公式アカウントの運用マニュアルを持っているクリニックは、この3ルールを投稿前チェックに組み込むのが現実的です。
違反したときの流れと罰則
違反が見つかった場合の手順は、ガイドライン第5の「広告指導」に定められています。いきなり処分されるわけではなく、段階があります。
※ 出典: 下表の根拠条文と罰則は厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第5 4 広告指導(取得 2026-10)の記載に基づきます。
| 段階 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 任意の調査 | — | 広告に記載された医療機関などに説明を求める |
| 行政指導 | — | 広告の中止や内容の是正を求める。報告書の徴収、書面による改善指導 |
| 報告命令・立入検査 | 法第6条の8第1項 | 任意の調査に応じない場合など。報告を怠る・虚偽報告・検査拒否には罰金(法第89条第2号) |
| 中止命令・是正命令 | 法第6条の8第2項 | 行政指導に従わない、違反を繰り返すなど悪質な場合。期限を定めて命ずる |
| 告発・罰則 | 法第87条第1号 | 虚偽広告、または中止命令・是正命令に従わない場合は懲役又は罰金(金額は下記) |
| 行政処分 | 法第28条・第29条 | 管理者変更命令、開設許可の取り消し、閉鎖命令 |
| 公表 | — | 中止命令・是正命令・刑事告発などを実施した際は原則として事例を公表 |
罰則の内容は、虚偽広告と中止命令・是正命令違反が6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(法第87条第1号)、報告命令・立入検査への違反が20万円以下の罰金(法第89条第2号)です。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第5 4 広告指導 (2)(4)(取得 2026-10)
命令の対象者は、病院・診療所なら開設者または管理者、広告代理店・新聞社などならその代表者です。Q&A(Q5-2)は、サイト運営会社や広告を作成した広告代理店にも是正命令や罰則が科されることがあると明記しています。制作会社が「クライアントの指示どおりに作った」と言っても免責されない構造です。
また、医療法と景品表示法・医薬品医療機器等法は重畳的に適用されます。他法令に基づく処分を受けたことを理由に医療法の広告違反が免責されることはない、とガイドラインは述べています。クリニックの広告出稿で薬機法・景表法の観点をどう扱うかは「クリニックのリスティング広告」のページでも整理しています。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第5 3・4(3)(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q5-2(取得 2026-10)
セルフチェックリスト — 自院サイト・SNS を点検する20項目(所要時間の目安は60分)
印刷して、該当ページの URL を右に書き込みながら使ってください。1つでも「いいえ」があれば、その項目の出典ページを開いて直し方を確認します。
A. 全ページ共通(禁止広告)
- 「必ず」「絶対」「最高」「No.1」「地域一番」の語がない
- 他院の名称や価格と比較する記述がない
- 「満足度○%」「成功率○%」を、調査方法などの根拠を示さずに書いていない
- 患者の感想・体験談(口コミサイトからの転載、アンケートの抜粋を含む)を治療内容・効果について掲載していない
- ビフォーアフター写真に、治療内容・費用・期間と回数・主なリスク・副作用を隣接して記載している
- 「○% OFF」「モニター価格」「無料!」のように費用を強調していない
- 「最新」「最先端」を、事実として裏付けられる範囲でしか使っていない
- 「痛くない」「○週間で○%に効果」のような効果・無痛の断定がない
B. 自由診療ページ(限定解除)
- 問い合わせ先(電話番号・メールアドレスなど)が各ページに明示されている
- 治療ごとに、通常必要とされる治療内容を記載している
- 治療ごとに、標準的な費用(または最低〜最高金額の範囲、発生頻度の高い追加費用を含む)を記載している
- 治療ごとに、治療期間と回数を記載している
- 治療ごとに、主なリスク・副作用を記載している(「施術を受けられない方」「術後の注意事項」だけでは不足)
- 費用・リスクを別ページへのリンクや極端に小さな文字にしていない
- 複数の治療や内服薬をセット表示している場合、治療・薬剤ごとに内容・リスクを分けて書いている
- 未承認医薬品等・適応外使用がある場合、5項目(未承認である旨・入手経路・国内承認品の有無・諸外国の安全性情報・救済制度の対象外)を記載している
C. SNS・動画・広告
- 公式 SNS のプロフィール・投稿・返信・ハッシュタグに A の項目が含まれていない
- 自由診療の投稿・動画は、投稿内または近傍(固定投稿・概要欄)で内容・費用・リスクが一体的に確認できる
- バナー広告・リスティング広告の文面は広告可能事項の範囲内に収まっている
- オンライン診療受診施設を設置・提携している場合、医療機関ではない旨と連携医療機関名を視認性の高い形で明示し、届出を済ませている
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第3-1・第3-3・第4(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF(取得 2026-10)。項目は両資料の記載を点検用に並べ替えたもので、法令上の網羅性を保証するものではありません。
そのまま使えるテンプレ — 自由診療ページと明示文の雛形
事例解説書の改善例をもとに、自由診療の治療ページに置くブロックの骨組みを示します。文言は自院の治療内容に合わせて医師が確認してください。
自由診療ページの必須ブロック(治療1つにつき1セット)
## ○○治療(自由診療・全額自己負担)
### 治療の内容
(通常必要とされる治療の流れを、検査→処置→経過観察の順に)
### 治療期間・回数
治療期間:○〜○か月 / 治療回数:○〜○回
### 費用
総額 ○○,○○○円〜○○,○○○円(税込)
※ 症状により変動します。発生頻度の高い追加費用:○○(○,○○○円〜)
### 主なリスク・副作用
・治療を受けたことにより起こりうる症状を箇条書き(痛み・腫れ・出血・感染・知覚過敏 など、治療に即して)
・まれに起こる合併症
### お問い合わせ
電話:0X-XXXX-XXXX / メール:info@example.jp
未承認医薬品等・適応外使用の注記(上のブロックに追加)
### 未承認医薬品等について
・この治療で使用する○○は、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器(または承認された効能・効果とは異なる目的での使用)です。
・入手経路:当院で個人輸入しています。個人輸入された医薬品等のリスクは厚生労働省のページをご確認ください。
・国内の承認医薬品等の有無:同一の成分・性能で国内承認を受けたものは○○です/ありません。
・諸外国における安全性等:○国で承認されており、添付文書に記載された重大な副作用は○○です(承認国がない場合:重大なリスクが明らかになっていない可能性があります)。
・医薬品副作用被害救済制度の対象にはなりません。
オンライン診療受診施設の明示文(受診施設を設置・提携する場合)
この施設は医療機関ではなく、○○クリニック(住所・電話番号)の医師がオンライン診療を行うものです。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第3-3 2・第4(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q4-1(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(28)(29)(取得 2026-10)
よくある失敗 5パターン
- 料金表を1ページにまとめ、リスクは治療ページの末尾に小さく置く。 限定解除③④は「リンク先」「極端に小さな文字」を明示的に排除しています。治療ごとに同じ画面内で費用とリスクが読める構成に直します。
- Google の口コミを「患者様の声」として自院サイトに並べる。 事例(17)が禁止事例として挙げる「口コミサイトからの転載」にそのまま該当します。口コミは Google ビジネスプロフィール上に置き、自院サイトには転載しません。
- 「○○専門外来」「△△学会認定医」をトップページに書き、問い合わせ先が無い。 事例(27)は、未届出の専門性資格やメディア掲載を、問い合わせ先を明示せずに掲載している例を限定解除要件未充足としています。問い合わせ先を同一ページに置けば限定解除で掲載できます。
- SNS では「詳細は当院ホームページで」と書いて費用・リスクを省く。 投稿は単独で1つの広告です。固定投稿や概要欄に内容・費用・リスクをそろえ、投稿内から近傍の掲載場所を示します。
- 制作会社がクライアントの原稿をそのまま実装する。 規制は「何人も」が対象で、広告代理店やサイト運営会社も是正命令・罰則の対象です(Q5-2)。納品前に本記事の20項目で点検し、修正提案を記録に残します。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」PDF 事例(17)(27)(40)(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q5-2(取得 2026-10)
公的リソース集
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」 — ガイドライン・Q&A・事例解説書・告示・通知がすべてここに集約されています
- 医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)PDF — 全48ページ。第3-3(限定解除)と第5(指導・罰則)を先に読みます
- 医療広告等ガイドラインに関するQ&A PDF — 「無料の健康相談」「最新」「オンライン診療」など個別表現の可否
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)PDF — 全73ページ。違反例と改善例が図で対比されています
- 医療機関ネットパトロール 通報フォーム — 厚生労働省「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業」の受付窓口。競合の違反を見つけた側も、自院が通報される側にもなります
- 医療広告相談窓口一覧 PDF — 都道府県・保健所設置市・特別区の担当部署と電話番号。表現の可否に迷ったら所管の自治体に相談します
※ 出典: 上記はいずれも厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」から辿れる公式ページ・公式 PDF(取得 2026-10)。Q&A PDF の Q5-1 は、医療広告の疑問は各医療機関を所管する地方自治体や保健所に相談するよう案内しています。
よくある質問
Q. 2026年3月の改正で、既存のクリニックサイトに新しい義務は増えましたか?
病院・診療所のサイトに対する禁止事項や限定解除の4要件そのものは変わっていません。新設されたのは「オンライン診療受診施設」に関する広告規制(医療法第6条の7の2)で、自院が受診施設を設置・提携する場合だけ新しい表示義務が生じます。一方で事例解説書第6版は、自由診療の一括表示や SNS・動画の事例を追加しており、既存サイトの点検基準は実質的に細かくなっています。
Q. SNS の投稿や YouTube の動画も医療広告になりますか?
なります。事例解説書第6版は、SNS はプロフィール・投稿・返信のいずれかに禁止事項が含まれれば違反、動画は映像・音声・概要欄・コメント欄まで含めて判断すると整理しています。自由診療の内容・費用・リスクは、投稿や動画の近くで一体的かつ一覧性をもって示す必要があり、「詳細は当院ホームページで」と別サイトへ送るだけでは不足です。
Q. 制作会社や広告代理店にも責任はありますか?
あります。医療広告規制は「何人も」が対象で、Q&A(Q5-2)はサイト運営会社や広告を作成した広告代理店にも是正命令や罰則が科されることがあると明記しています。中止命令・是正命令の対象者も、広告代理店の場合はその代表者宛てとされています。制作会社側も納品前に本記事の点検表で確認する必要があります。
Q. 違反すると、どのような罰則がありますか?
通常はまず行政指導(広告の中止・是正の求め)から始まり、従わない場合に報告命令・立入検査、さらに中止命令・是正命令へ進みます。虚偽広告や、中止命令・是正命令に従わなかった場合は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(医療法第87条第1号)、報告命令・立入検査への違反は20万円以下の罰金(第89条第2号)です。命令や告発に至った事例は原則として公表されます。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」PDF 第5 4(2)(取得 2026-10)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q5-2(取得 2026-10)
Q. 整骨院・鍼灸院のサイトにもこのガイドラインが適用されますか?
適用されません。Q&A(Q6-1)は、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復の業や施術所は医療法の対象ではなく、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」または「柔道整復師法」の関係法令と、それらの施術所に関する別の広告指針が適用されるとしています。ただし景品表示法と医薬品医療機器等法は業種を問わず適用されます。
※ 出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」PDF Q6-1(取得 2026-10)
次の一歩
まず、自院サイトの自由診療ページを1つ選び、上の20項目の B(9〜16)だけを点検してください。費用・期間と回数・リスクが同じ画面に無い治療が1つでもあれば、テンプレのブロック構成に組み替えるのが最初の修正です。次に公式 SNS の直近の投稿をさかのぼり(10件程度が目安)、C(17〜18)を確認します。制作会社に依頼している場合は、この記事の URL と点検結果を添えて修正範囲を書面で合意します。
サイト全体の構成見直し、自由診療ページの作り直し、SNS 運用ルールの整備を含めて相談したい場合は、現在のサイト URL と気になっているページを書き添えてお問い合わせください。現状のページ構成を点検表に照らして整理し、修正の優先順位と実装ステップを書面で提示します。契約を前提とせずご相談いただけます。医療機関向けのサイト制作は「クリニックのWeb制作」「歯科医院のWeb制作」のページにまとめています。
更新履歴
- 2026-10-29: 初版公開