月末の残業がなくなった経理担当の話
「月末は帰れないのが当たり前」。ある従業員12名の卸売会社で、経理担当の方がそう言っていました。
請求書の突き合わせ、入金確認、仕訳入力。毎月同じ作業を繰り返す。間違えると修正にさらに時間がかかる。他の業務が全部後ろ倒しになる。
私たちがこの会社の業務を分析したところ、経理担当が月に費やしていた「繰り返し作業」は合計32.5時間でした。1日あたり約1.5時間。年間で390時間。人件費に換算すると年間78万円相当です。
この会社では、AI自動化を導入した結果、32.5時間のうち30時間を削減しました。経理担当は月末も定時退社できるようになり、空いた時間で資金繰りの分析業務を始めています。
何に時間を取られていたのか
「忙しい」と感じていても、実際に何に時間を使っているかを把握している人は少ないです。
私たちがこの会社で実施した業務棚卸しの結果がこちらです。
- 請求書データの手入力 — 月12時間(1件あたり8分 × 約90件)
- 入金消込の突き合わせ — 月8時間(銀行明細とExcelを目視で照合)
- 月次レポート作成 — 月6.5時間(データ集計、グラフ作成、PDF化)
- 問い合わせメール対応 — 月4時間(納期・在庫確認の定型返信)
- 経費精算のチェック — 月2時間(領収書とデータの照合)
合計32.5時間。これがすべて「繰り返し」だったわけではありません。でも30時間分は、パターンが決まっている定型業務でした。
何を、どうやって自動化したか
自動化は一気にやったわけではありません。3つのフェーズに分けて、段階的に進めました。
フェーズ1 — 請求書データの自動読み取り(月12時間 → 0.5時間)
PDFの請求書をAI-OCRで読み取り、会計ソフトに自動入力する仕組みを作りました。使ったのはDifyとGoogle Apps Scriptの組み合わせです。
精度は97.2%。残りの2.8%だけ人間がチェックすれば済む。月12時間かかっていた作業が30分になりました。
フェーズ2 — 入金消込と定型メールの自動化(月12時間 → 1時間)
銀行APIから入金データを取得し、請求データと自動マッチング。一致したものは自動消込、不一致のものだけアラートを出す。n8nでワークフローを構築しました。
問い合わせメールも、納期・在庫に関する定型質問はAIが自動返信。対応が必要なものだけ担当者に転送する仕組みです。
フェーズ3 — 月次レポートと経費精算(月8.5時間 → 1時間)
データの集計からグラフ生成、PDF化までを自動化。毎月1日の朝に自動でレポートが生成され、Slackに届く。経費精算も、領収書の写真をアップロードすればAIがデータ化して照合するフローにしました。
請求書データの自動読み取り
Dify + GAS
入金消込 + 定型メール返信
n8n + 銀行API
月次レポート + 経費精算
n8n + Dify
実際のコストと削減効果
「自動化にいくらかかったのか」。一番聞かれる質問です。隠さずに書きます。
初期構築費用は48万円でした。内訳は、業務分析に8万円、ワークフロー設計・構築に32万円、テスト・調整に8万円。
月額の運用費は2.3万円。AI-OCRのAPI利用料、n8nのホスティング、Difyの利用料を合わせた金額です。
一方、削減できた人件費相当額は月あたり9万円(時給3,000円 × 30時間)。
つまり、月のネット削減額は6.7万円。初期費用は7.2ヶ月で回収できた計算です。
2年間で見ると、投資総額は48万円+(2.3万円×24ヶ月)= 103.2万円。削減効果は9万円×24ヶ月 = 216万円。ROIは109%。
ただし、本当の効果は数字だけでは測れません。経理担当が資金繰り分析に時間を使えるようになったこと。月末の残業がゼロになったこと。精神的な余裕が生まれたこと。これらは金額に換算できない価値です。
業務別の月間削減時間
AI自動化を始めるための5ステップ
「うちもやりたいけど、何から始めれば?」という方に向けて、私たちがクライアント企業に提案している手順をそのまま共有します。
ステップ1 — 1週間の業務ログをつける
まず現状把握。全員が1週間だけ、やった作業と所要時間を記録する。Googleスプレッドシートで十分です。「何にどれだけ時間を使っているか」を可視化するだけで、課題が見えてきます。
ステップ2 — 繰り返し業務を抽出する
業務ログから「毎日・毎週・毎月やっている作業」を抜き出す。その中で「パターンが決まっているもの」にマークをつける。これが自動化候補です。
ステップ3 — 一番効果が大きい1つを選ぶ
候補の中から「頻度が高い × 1回あたりの時間が長い」業務を1つ選ぶ。最初から3つも4つもやろうとしない。1つだけに集中するのが成功の鍵です。
ステップ4 — 小さく試して効果を測定する
選んだ業務の自動化を構築し、2週間テスト運用する。削減時間、エラー率、コストを数値で記録する。「なんとなく楽になった」ではなく、数字で効果を確認する。
ステップ5 — 成功したら横展開する
1つ目が安定したら、次の業務に展開。この時点でチーム内に「自動化って本当に使えるんだ」という共通認識ができているので、2つ目以降は導入がスムーズです。
月30時間は「特別な会社」だから削減できたわけではない
この事例を紹介すると、「うちはもっと複雑だから無理」という反応が返ってくることがあります。
でも、私たちが支援してきた中で言えることがあります。従業員5名の不動産会社でも月18時間を削減しました。8名の会計事務所では月25時間。3名のEC事業者では月14時間。
規模や業種は関係ありません。繰り返し作業がある限り、自動化の余地は必ずあります。
大事なのは、最初の1つを始めること。完璧を目指さないこと。そして、数字で効果を確認すること。
「何から自動化すればいいかわからない」という方へ。 Tufe Companyでは、業務棚卸しから自動化の設計・構築まで一貫して支援しています。まずは無料の業務診断で、貴社の「30時間」がどこにあるかを一緒に見つけましょう。