生成 AI のチャット、社内文書を読む AI 検索、メールを仕分ける AI エージェント、社内 PC で動かすローカル LLM。どれを入れるにしても、AI は会社のデータを読み、クラウドや外部サービスとつながる道具です。その土台になる情報セキュリティが崩れたままでは、AI の便利さがそのまま漏えいの経路になります。
IPA(情報処理推進機構)は2026年3月に「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を第4.0版に改訂し、9月には6か条と自社診断の解説編を公開しました。同じ時期に、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が設計し IPA が運営する「SCS 評価制度」の要求事項とガイドが出そろい、★3・★4 の受付は2027年3月に始まる予定です。
この記事は、IPA と補助金事務局の公開資料だけを出典に、AI ツールを導入する中小企業が先に整えておく土台を、ガイドラインの6か条・SECURITY ACTION・SCS 評価制度の3つに分けて整理します。読者は、AI 導入を検討している経営者と、情報システム・DX・Web の担当者を想定しています。特定の AI 製品には寄せません。攻撃の手口は書かず、会社が確かめる項目に絞ります。
結論 — 先に要点だけ
- 第4.0版の変更点は3つ。 「バックアップを取ろう!」が加わって5か条が6か条に、SCS 評価制度の考え方を取り込み、セキュリティ人材の確保・育成ガイドが付録に加わった
- ガイドライン本編に、生成 AI の注意点が書かれている。 利用規約の確認、機密・個人情報を入力しない、成果物を人が確認する、補助的ツールとして使う、の4点
- SECURITY ACTION は「認定」ではなく「宣言」。 一つ星は6か条に取り組むことの宣言で、対策実施前でも申し込める。デジタル化・AI導入補助金2026 では交付申請の要件
- SCS 評価制度は2027年3月に★3・★4 の受付開始予定。 取得は任意だが、委託元が委託先に求める水準を★で示す設計なので、取引先から求められる前に要求事項を読んでおく
- AI 導入前の土台は、6か条を AI ツールの言葉に読み替えれば点検できる。 この記事の読み替え表とチェックリストで、1日で棚卸しできる
第4.0版で何が変わったか
IPA のガイドラインは、経営者が認識すべき指針をまとめた「第1部 経営者編」と、社内で対策を実践する手順の「第2部 実践編」で構成され、個人事業主や小規模事業者を含む中小企業の利用を想定しています。第4.0版は2026年3月27日に公開され、ページは2026年9月30日に6か条と自社診断の解説編を追加して更新されました。本編は全70ページ、付録は8本です。
※ 出典: IPA — 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(第4.0版)(取得 2026-11)
| 改訂点 | 中身 | AI 導入との関係 |
|---|---|---|
| 5か条が6か条に | 「バックアップを取ろう!」を追加。自社診断の項目にも「外部から内部ネットワークへの不要な通信を遮断する」「ウェブサイトを安全に運用する」を追加 | AI に業務データを渡す前に、元データの控えと、外から中への通信の線引きが要る |
| SCS 評価制度の考え方を取り込み | 経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が検討を進める制度に沿って、組織的対策と技術的防御の考え方を整理。第2部実践編を全面改訂 | 取引先から「★3 相当の対策」を求められたとき、ガイドラインの項目がそのまま対応表になる |
| 付録1 人材の確保・育成ガイド | 経済産業省の検討会が2025年5月に示した実践的方策ガイド β版を踏まえ、中小企業のセキュリティ人材の確保・育成の方策と取組事例を追加 | AI 導入の担当者を誰にするか、外部の専門家をどう使うかの参考になる |
※ 出典: IPA — 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(第4.0版)(取得 2026-11)/ ガイドライン本編 PDF(取得 2026-11)
第2部は4つの STEP に分かれ、自社の方針とリソースに合う STEP を選んで取り組む構成です。STEP1 が6か条、STEP2 が「組織的な取り組みを開始する」(基本方針の作成と周知)、STEP3 が「本格的に取り組む」(規程の作成)、STEP4 が「より強固にするための方策」です。SCS 評価制度の★3・★4 を見据えた準備は、STEP3 の末尾のコラムで扱われています。
ガイドライン本編が書く、生成 AI の4つの注意点
本編のコラム「生成 AI の利用とサイバーセキュリティ」は、生成 AI に社内機密や個人情報を入力すると外部に流出する可能性があり、提供側がデータを学習に使う場合は意図しない拡散につながる、と整理したうえで、次の4点を挙げています。
- 生成 AI の利用規約やプライバシーポリシーを事前に確認し、データの取り扱い方針を把握する
- 機密性の高い情報や個人情報など、外部に漏れると問題になるデータは AI サービスに入力しない
- 生成された成果物は必ず人間が確認し、正確性や法的リスクをチェックする
- AI の出力内容をそのまま業務で利用するのではなく、補助的ツールとして活用する
※ 出典: IPA — 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版 本編 PDF コラム「生成 AI の利用とサイバーセキュリティ」(取得 2026-11)
この4点は、AI の種類を問いません。クラウドのチャット、API で組んだ自動化、ローカル LLM のどれでも、「何を入力するか」「出力を誰が確かめるか」は会社が決めることです。入力の線引きの具体的な作り方は、生成 AI の社内利用ガイドラインの記事で規程の雛形まで示しています。
情報セキュリティ6か条を AI ツールの言葉に読み替える
6か条は、企業の規模に関わらず必ず実行すべき対策として、ガイドラインの STEP1 に置かれています。AI ツールを入れる会社は、同じ6か条を「AI に何を読ませ、どこにつなぐか」の観点で読み替えると、土台の穴がそのまま見えます。右の列は私たちの整理で、IPA の記述ではありません。
| 6か条(IPA) | もとの意味 | AI ツール導入での読み替え(私たちの整理) |
|---|---|---|
| 1. OS やソフトウェアは常に最新の状態に | 修正プログラムの適用、最新版の利用 | AI のデスクトップアプリ・ブラウザ拡張・ローカル LLM の実行環境も更新対象に入れる。サポート切れの OS で AI を動かさない |
| 2. ウイルス対策ソフトを導入 | 定義ファイルを最新に保つ | AI が生成・取得したファイルやコードも、他のダウンロードと同じ検査を通す |
| 3. パスワードを強化 | 長く、複雑に、使い回さない | AI サービスのアカウントに多要素認証を付け、API キーを共有チャットや文書に貼らない |
| 4. 共有設定を見直す | ウェブサービスや複合機の設定で、無関係な人に見せない | AI に読ませるフォルダ・コネクタの範囲を必要な人と業務に限定する。退職時に AI 側の権限も消す |
| 5. バックアップを取る | 故障・誤操作・感染に備えて控えを持つ | AI に書き換えや削除をさせる業務は、元データの控えと戻し方を先に用意する |
| 6. 脅威や攻撃の手口を知る | 偽メール・偽サイトの手口を知って対策する | AI を狙う新しい手口(指示の混入、個人アカウント経由の流出)を IPA の資料で定期的に把握する |
※ 出典: IPA — 情報セキュリティ6か条(SECURITY ACTION 一つ星のページ)(取得 2026-11)/ 情報セキュリティ6か条 解説編 PDF(2026年9月)(取得 2026-11)
解説編は、パスワードの対策例として VPN や重要なシステムには多段階認証・多要素認証・パスキーを可能なら設定すること、共有設定の対策例として従業員の異動や退職時に速やかに設定を変更(削除)することを挙げています。AI サービスのアカウントとコネクタは、この2つの対策例がそのまま当てはまる「重要なシステム」と「共有設定」です。
6か条の「脅威を知る」に関しては、IPA が2026年1月29日に公開した「情報セキュリティ10大脅威 2026」が参考になります。組織向けの順位は1位がランサム攻撃、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃で、3位に「AI の利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出されました。AI にメールや外部文書を読ませる業務の統制は、別の記事で扱っています。
※ 出典: IPA — 情報セキュリティ10大脅威 2026(取得 2026-11)
SECURITY ACTION — 宣言の中身と、AI 導入の補助金との関係
SECURITY ACTION は、中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する IPA の制度です。取り組み段階に応じて「★一つ星」と「★★二つ星」があり、ロゴマークは無料で使えます。
| 段階 | 宣言の内容 | 事前に必要なこと |
|---|---|---|
| ★一つ星 | これから「情報セキュリティ6か条」に取り組むことを宣言する | なし。対策実施前でも申し込める |
| ★★二つ星 | 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を実施し、「情報セキュリティ基本方針」を策定・外部公開して、対策に取り組むことを宣言する | 25項目の自社診断の実施と、基本方針の外部公開(自社サイト、会社案内など) |
※ 出典: IPA — SECURITY ACTION 一つ星(取得 2026-11)/ 二つ星(取得 2026-11)
宣言までの手順(2026年4月1日からの新システム)
2026年4月1日に申込方法が変わり、申込から管理まで「SECURITY ACTION 管理システム」で行います。利用には GビズIDプライムまたはメンバーのアカウントが必須です。IPA の案内では、GビズID の取得からロゴマークの使用まで最短1日で実施できるとされていますが、メンテナンス等で使えない期間もあるため余裕を持つよう求めています。
※ 出典: IPA — SECURITY ACTION 自己宣言の申込方法(取得 2026-11)
- 取組目標を決める(一つ星か二つ星か。二つ星は自社診断の実施と基本方針の外部公開が事前条件)
- GビズIDプライムを取得する(法人・個人事業主とも)
- 管理システムの申込フォームに入力する(個人情報の取扱いとロゴマーク使用規約への同意、事業者情報、取り組み内容)
- 手続完了メールで自己宣言 ID を受け取る(届かない場合は管理システムのマイページで確認)
- 必要ならマイページからロゴマークをダウンロードして使う
※ 出典: IPA — SECURITY ACTION 自己宣言の申込方法(取得 2026-11)
注意したいのは表現です。IPA は、SECURITY ACTION は情報セキュリティ対策状況を IPA が認定するものではないと明記し、「一つ星の認定を受けました」「取得しました」を不適切な例、「一つ星を宣言しました」を適切な例として挙げています。自社サイトや会社案内に書くときは、この表現に合わせます。
デジタル化・AI導入補助金2026 では交付申請の要件
AI ツールを補助金で入れる会社にとって、SECURITY ACTION は「やっておくと良いこと」ではなく要件です。デジタル化・AI導入補助金2026 の公募要領は、一つ星または二つ星の宣言を要件とし、交付申請時に宣言済アカウント ID の入力を求めて確認するとしています。事務局は、2026年3月末までに申し込んだ自己宣言 ID では交付申請を提出できず、新システムで申し込んだ ID が必要であること、自己宣言 ID の申込時の GビズID は補助金の申請マイページと同一の GビズIDプライムでなければならないことを案内しています。
さらに公募要領の改訂で、交付申請の審査事項に「セキュリティ対策を進めているか」が追加されました。宣言は入口で、実際に対策を進めているかが審査で見られる形です。補助金の枠や締切はデジタル化・AI導入補助金2026 の記事にまとめています。
※ 出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)PDF(取得 2026-11)/ 事務局 — 交付申請手続きにおける「SECURITY ACTION」自己宣言 ID の登録について(取得 2026-11)
同じ補助金の「セキュリティ対策推進枠」は、IPA の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、IT導入支援事業者が登録したサービスの利用料を最大2年分補助する枠で、補助率は小規模事業者が3分の2以内、中小企業が2分の1以内、補助額は5万円から150万円です。6か条の「ウイルス対策」「脅威を知る」を外部サービスで補う会社は、この枠が使えます。
※ 出典: デジタル化・AI導入補助金2026 — セキュリティ対策推進枠(取得 2026-11)
SCS 評価制度 — 2027年3月受付開始、取引先から求められる前に知っておくこと
SCS 評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、2026年3月に経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が公表した制度構築方針に基づく制度で、両者の監督のもと IPA が運営します。2社間の取引契約で、委託元が委託先に適切な段階(★)を提示し、対策を促して実施状況を確認する使い方を想定しています。
※ 出典: IPA — SCS 評価制度の詳細情報(取得 2026-11)/ SCS 評価制度トップ(取得 2026-11)
| 項目 | ★3 | ★4 |
|---|---|---|
| 水準 | 一般的なサイバー脅威に対処できること | 初期侵入の防御にとどまらず、被害拡大の防止とサプライチェーンでの役割に適合した強靭化策 |
| 想定する脅威 | 広く認知された脆弱性等を悪用する一般的なサイバー攻撃 | 供給停止でサプライチェーンに大きな影響をもたらす企業への攻撃や、機密情報など影響の大きい資産への攻撃 |
| 評価方式 | 自己評価を SCS セキュリティ専門家が確認する(専門家確認付き自己評価) | 評価機関による審査と技術検証(第三者評価。文書確認に加え実地審査と脆弱性検査) |
| 要求項目数 | 26件 | 43件(7の大分類・16の中分類は共通) |
| 登録料(税込) | 1年分 20,000円。2028年3月31日までは 10,000円 | 3年分 60,000円 |
| 受付開始 | 2027年3月予定 | 2027年3月予定 |
※ 出典: IPA — SCS 評価制度の詳細情報(取得 2026-11)/ よくある質問(取得 2026-11)/ 料金設定のお知らせ PDF(2026年9月18日)(取得 2026-11)
2026年10月28日には、要求事項・評価基準の Ver.1.1、自己評価等ガイド、第三者評価ガイド、技術検証ガイド、解説書が公開されました。登録申請の手引は2026年11月末頃、SCS セキュリティ専門家に研修を行う研修事業者は2026年12月末頃に公表予定です。★5 は経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室で検討中です。
※ 出典: IPA — SCS 評価制度 要求事項・評価基準(取得 2026-11)/ よくある質問(取得 2026-11)
AI 導入を検討している会社が今の時点で押さえるのは、次の3点です。
- 取得は任意で、直ちに取引停止になる制度ではない。 IPA のよくある質問は、★の取得を取引上の要件にするかは契約当事者間で決めるものとし、要求事項を満たしていないことを理由に直ちに取引停止が求められるものではないとしています
- 特定の製品を買う制度ではない。 EDR や資産管理システムなど特定のセキュリティ対策製品の導入を求めるものではない、と IPA は答えています
- ガイドラインとの対応表がある。 ★3・★4 の要求事項とガイドラインの紐づけは、付録5「情報セキュリティ関連規程(サンプル)」に掲載されています。SECURITY ACTION の二つ星まで進んだ会社は、同じ付録で★3 との距離を測れます
AI ツールを入れると、会社は AI ベンダーの「委託元」になり、同時に取引先から見れば AI でデータを扱う「委託先」になります。SCS の要求事項を共通のチェックリストとして読んでおくと、AI ベンダーに何を確認し、取引先に何を説明するかが同じ言葉で整理できます。
すぐ使える3点セット — チェックリスト・基本方針の追記文・失敗パターン
AI 導入前の土台チェックリスト(15項目)
ガイドラインの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」25項目と、付録7「クラウドサービス安全利用の手引き」の15項目から、AI ツール導入に直結するものを私たちが選んで言い換えたものです。自社診断の原本は「実施している」「一部実施している」「実施していない」「わからない」の4択で採点し、「わからない」はマイナス点になります。まず原本の25項目を一度やり、そのうえでこの15項目を AI 導入の観点で確かめてください。
※ 出典: IPA — 付録3「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」PDF(取得 2026-11)
| No | 確認すること | 原本の対応項目 |
|---|---|---|
| 1 | AI を使う端末の OS・ブラウザ・AI アプリを最新に保つ仕組みがある | 自社診断 1 |
| 2 | AI サービスのアカウントは個人ごとに発行し、共有していない | 自社診断 3・4 |
| 3 | AI サービスのログインに多要素認証を設定している | 6か条解説編 3 |
| 4 | AI に読ませるフォルダ・コネクタの範囲を、業務ごとに必要な人に限定している | 自社診断 4 |
| 5 | 異動・退職時に、AI 側のアカウントと権限も止める手順がある | 6か条解説編 4 |
| 6 | AI に書き換えや削除をさせる前に、元データのバックアップと戻し方がある | 自社診断 5 |
| 7 | 新しい脅威や手口を把握し、社内で共有する仕組みがある | 自社診断 6 |
| 8 | AI サービスの利用規約とプライバシーポリシーで、入力が学習に使われるかを確認した | 本編コラム 1 |
| 9 | AI に入力してよい情報と、入力してはいけない情報(個人情報・営業秘密)を区分して明示した | 本編コラム 2・自社診断 25 |
| 10 | AI の出力を社外に出す前に、人が確認する担当と手順を決めた | 本編コラム 3・4 |
| 11 | AI サービスの稼働率・障害時の対応・サポート窓口を確認した | 付録7 6・12 |
| 12 | 利用をやめるときのデータの扱い(削除・持ち出し)を確認した | 付録7 13 |
| 13 | データの保存先の国・地域と、適用される法令・契約条件を確認した | 付録7 14・15 |
| 14 | 個人所有の端末や個人アカウントで AI を業務利用する場合のルールを決めた | 自社診断 21 |
| 15 | AI 経由の漏えいや誤送信が起きたときの連絡先・初動・報告の手順がある | 自社診断 24・付録8 |
※ 出典: IPA — 付録3「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」PDF(取得 2026-11)/ 付録7「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」PDF(取得 2026-11)/ 付録8「セキュリティインシデント対応の手引き」PDF(取得 2026-11)
付録7 のチェックシートは「選択するとき」「運用するとき」「セキュリティ管理」の3部構成で、取り扱う情報の重要度の確認、事業者の信頼性、管理担当者、利用者の範囲、認証、バックアップ、利用終了時のデータ、適用法令、保存先の地理的所在地を順に確かめる作りです。AI サービスも「利用するだけ」のクラウドサービスなので、このシートがそのまま使えます。
情報セキュリティ基本方針に足す AI の一文(テンプレ)
二つ星の宣言には基本方針の外部公開が必要です。ガイドライン付録2 のサンプルを使う会社は、次のような一文を足すと、AI 利用の方針が外からも分かります。文言は自社の実態に合わせて直してください。
当社は、生成 AI を含む外部の情報サービスを業務に利用するにあたり、
入力してよい情報の範囲を定め、個人情報および営業秘密を入力しないこととします。
AI が生成した成果物は、担当者が内容を確認したうえで利用します。
利用するサービスは、データの取り扱い方針と安全対策を確認したうえで選定します。
失敗パターン5つ
- 宣言だけして6か条に手を付けない。 補助金の要件を満たす目的で一つ星を宣言したあと、OS 更新やバックアップが止まったまま AI ツールを入れる。審査事項には「セキュリティ対策を進めているか」が入っている
- 「認定を取得」と書いてしまう。 IPA が不適切な例として挙げている表現を自社サイトに載せる。正しくは「宣言しました」
- AI のアカウントが共有設定の対象から漏れる。 複合機や NAS の共有範囲は見直したのに、AI に読ませるフォルダやコネクタの範囲は誰も見ていない
- 元データの控えなしに AI へ書き換えを任せる。 6か条の「バックアップ」を、ファイルサーバーの話だと思い込む
- 取引先から★3 を求められてから要求事項を初めて読む。 受付開始は2027年3月予定で、登録申請の手引は2026年11月末頃の公表予定。要求事項とガイドの PDF は今すぐ読める
公的リソース集
※ 出典: 各リンク先(取得 2026-11)。配布元はいずれも IPA のガイドラインページまたは補助金事務局の公式サイトです。
| 資料 | 使いどころ |
|---|---|
| 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版 | 本編・付録8本・解説資料のダウンロード元。引用は出典明記で可 |
| 5分でできる!情報セキュリティ自社診断 Excel 版 | 25項目を入力して採点する。二つ星の事前条件 |
| 付録2 情報セキュリティ基本方針(サンプル)Word | 書き換えるだけで基本方針になる。二つ星の外部公開用 |
| SECURITY ACTION 自己宣言の申込方法 | 管理システムへの入口と手順 |
| SCS 評価制度 要求事項・評価基準 | ★3・★4 の要求事項(Excel)、自己評価等ガイド、解説書 |
| SCS 評価制度 よくある質問 | 任意性・費用・申請時期の公式回答 |
| 情報セキュリティ10大脅威 2026 | 6か条の「脅威を知る」の年次更新に |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 公募要領・締切・セキュリティ対策推進枠 |
※ 出典: 各リンク先(取得 2026-11)。IPA のガイドラインは、出典(機構名・資料名・URL)を明記すれば資料に引用・抜粋して利用できると案内されています(ガイドラインページ「引用について」、取得 2026-11)。
AI 導入を外部に頼むとき、先に聞くこと
AI ツールの導入や業務自動化を外部に頼む場合、土台の話を最初にしない提案は、あとで権限と共有設定の作り直しが起きます。見積の前に、次の3つを聞いてください。
- AI に読ませるデータの範囲と権限を、6か条の「共有設定」として誰がどう決めるか
- 利用規約の確認(学習への利用、保存先、削除)を、提案側が書面で示すか
- 自社の SECURITY ACTION の段階と、取引先から求められる可能性のある SCS の★を踏まえて、設計がどう変わるか
AI 自動化を外注するときの契約面の確認項目は、別の記事にまとめています。
よくある質問
Q. AI ツールを入れる前に、情報セキュリティの土台まで整える必要がありますか?
あります。IPA の10大脅威 2026 は組織編の3位に AI 利用のリスクを初選出し、ガイドライン第4.0版のコラムは、生成 AI に機密や個人情報を入れないことと、出力を人が確認することを求めています。AI は会社のデータを読み、外とつながる道具なので、パスワード・共有設定・バックアップという基本が崩れたままだと、AI の便利さがそのまま漏えいの経路になります。
Q. SECURITY ACTION は認定や資格ですか?
違います。IPA は、情報セキュリティ対策状況を IPA が認定するものではないと明記し、「認定を受けた」「取得した」という表現を不適切な例として挙げています。正しくは「一つ星(二つ星)を宣言しました」です。ただし、デジタル化・AI導入補助金2026 では交付申請時に自己宣言 ID の入力が要件になっているので、AI ツールを補助金で入れる会社は先に済ませておく必要があります。
Q. SCS 評価制度の★は、取らないと取引を止められますか?
制度自体は取得を義務付けていません。IPA のよくある質問は、★の取得を取引上の要件にするかは契約当事者間で決めるものとし、要求事項を満たしていないことを理由に直ちに取引停止が求められるものではないと答えています。一方で、委託元が委託先に求める水準を★で示す設計なので、取引先から求められてから慌てないよう、要求事項を共通のチェックリストとして先に読んでおく価値があります。
Q. 小さな会社でも、ガイドラインの全部をやる必要がありますか?
全部を一度にやる前提ではありません。ガイドラインは第2部を4つの STEP に分け、自社の方針とリソースに合う STEP を選んで取り組む構成です。まず情報セキュリティ6か条に取り組むことを宣言し、次に25項目の自社診断で弱い所を見つけ、基本方針を作って公開する、という順番が制度の側で用意されています。
次の一歩
- 今週: 自社診断の Excel 版を一度やり、「わからない」が付いた項目を書き出す。AI を使う予定の業務について、上の15項目チェックリストを埋める
- 今月: 一つ星を宣言する(補助金を使う予定なら新システムの自己宣言 ID を控える)。付録2 で基本方針を作り、AI の一文を足して公開する
- 2027年3月まで: SCS の★3 要求事項と解説書を読み、取引先から求められたときに何が足りないかを把握しておく
チェックリストを埋めたうえで、AI ツールの導入や業務自動化の設計を進めたい場合は、埋めた表を添えてお問い合わせからご連絡ください。Tufe Company は AI 導入と業務自動化の設計・実装を行っており、読ませるデータの範囲・権限・確認の手順を含めて、書面で実装ステップを提示します。契約前提ではありません。AI 自動化サービスとClaude 導入支援のハブもあわせてご覧ください。
更新履歴
- 2026-11-05: 初版公開
関連ページ
- 生成 AI の社内利用ガイドラインの作り方【2026年9月】 — 入力の線引きと規程の雛形
- AI にメール・フォーム・社内文書を読ませる前に決める統制【2026年11月】 — 6か条の「脅威を知る」を AI エージェントで具体化
- 社内 PC で動かすローカル LLM の導入判断【2026年11月】 — クラウドに出さない選択肢の判断基準
- デジタル化・AI導入補助金2026 の枠と申請の流れ — SECURITY ACTION が要件になる補助金の全体像
- 機密データと AI — セキュリティを守りながら AI を使う方法 — データ区分と規格対応の観点
- AI 自動化を外注する際のチェックリスト — 契約・成果物の面からの確認項目